コロナ禍で浮き彫りになる格差。松田修の個展「こんなはずじゃない」が無人島プロダクションで開催

多様なメディアを用いて、社会に潜む問題や現象、風俗をモチーフに制作してきた松田修。その個展「こんなはずじゃない」が、東京・墨田区の無人島プロダクションで開催される。会期は12月5日〜2021年1月16日。

メインビジュアル 撮影=トモトシ (C) Osamu Matsuda Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production, Tokyo

 社会に潜む問題や現象を扱い、これまで「不適者生存」「何も深刻じゃない」など、自身の育った環境や生き方をタイトルに冠した展覧会を行ってきた松田修。その個展「こんなはずじゃない」が、12月5日~2021年1月16日に無人島プロダクションで開催される。

 本来は、東京オリンピック後の社会状況を見据えた「右往左往」展を開催予定だったという松田。しかし新型コロナウイルスの影響でオリンピックだけでなくあらゆるイベントがキャンセルとなった状況を受け、2020年の激動の世相を反映した「こんなはずじゃない」展に変更された。

 格差や差別が表面化したコロナ禍に際して松田は、自身もかつて経験した、阪神淡路大震災における高級住宅地と松田が育った尼崎のあいだの格差を思い出したと語る。また、尼崎で小さなスナックを営んでいた松田の母もコロナの影響で店を閉めることになったという。「こんなはずじゃない」という言葉はこうした松田の経験や、多くの人が今年抱いた感情を反映している。

 本展は、自身の育った環境や社会的弱者に対する、松田独自の視点を落とし込んだ新作群で構成。ひとりの女性が人生を私小説的に語るビデオや、今年初めから夏にかけて都内で撮影した記録映像、対立や差別を生む構造を考察する作品をはじめとした、映像や立体によるインスタレーションを展示する。

 社会の構造と、それによって生まれる情報や経済の格差など、現在多くの人が抱えているであろう社会問題を軸とする松田の作品。しかしそこには、自分の運命を受け入れながら、ポジティブな精神とタフな態度で生きるスピリットを見ることができるだろう。

編集部

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