追悼、奈良原一高。島根県立美術館で「奈良原一高『王国』とVIVOの時代」が開催

2020年1月に逝去した写真家・奈良原一高。その足跡を知ることができる展覧会「奈良原一高『王国』とVIVOの時代」が、島根県立美術館で開催中だ。同展では、1958年の個展「王国」の出展作と、 奈良原を含む写真家6人によるエージェンシー「VIVO」による作品を紹介する。

 

奈良原一高 沈黙の国「王国」より 1958 島根県立美術館蔵 (c)Narahara Ikko Archives

 2020年1月19日に逝去した写真家・奈良原一高。島根県立美術館ではその足跡をたどる展覧会「奈良原一高『王国』とVIVOの時代」(3月20日〜6月21日)が開催中だ。

 奈良原は1931年福岡県生まれ。56年に初個展「人間の土地」でデビューを飾り、58年には個展「王国」を開催。この展覧会により、日本写真家協会新人賞を受賞する。本展では、島根県立美術館の設立準備を機に、決定版として95年に奈良原本人が完成させた「王国」の全149点を総覧できる。

奈良原一高 沈黙の国「王国」より 1958 島根県立美術館蔵 (c)Narahara Ikko Archives

 「王国」は、「沈黙の園」「壁の中」の2部構成。「沈黙の園」は北海道函館近郊にある、当別の海を臨む丘陵に建てられたトラピスト修道院が舞台。いっぽうの「壁の中」は和歌山県婦人刑務所が舞台となっている。奈良原は「聖と俗」「男と女」「恩寵と懲罰」といった対照的な要素を持つふたつの隔絶状態をとらえることで、現代社会を見つめた。

奈良原一高 沈黙の国「王国」より 1958 島根県立美術館蔵 (c)Narahara Ikko Archives

 「王国」開催の翌年となる59年、奈良原は川田喜久治、佐藤明、丹野章、東松照明、細江英公とともに写真のセルフ・エイジェンシー「VIVO」を結成。VIVOは「映像派」といわれる新鮮な感覚で、戦後写真の新時代を切り拓いていった。本展では、VIVOの写真家たちの作品も、併せて展示する。

東松照明 熊本・天草下島「家」より 1959 島根県立美術館蔵

 デビュー作「人間の土地」とはまた異なる表情を持つ、「王国」と「VIVO」という仕事から、奈良原の初期の活動と日本の戦後写真史を俯瞰する展覧会となっている。

編集部

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