個別にアーティストとして活動しながら、共同制作を行ってきた青木陵子+伊藤存。このふたりによる展覧会「変化する自由分子のWORKSHOP」が、東京・神宮前のワタリウム美術館で開催される。会期は8月30日まで。
青木は1973年生まれ、99年京都市立芸術大学大学院ビジュアルデザイン科修了。動植物や日常の断片、幾何学模様などをイメージの連鎖によって描き、その素描を組み合わせた作品を発表してきた。いっぽう伊藤は71年生まれ、1996年京都市立芸術大学美術学部卒業。刺繍の手法を用いた作品をはじめ、アニメーションやドローイング、彫刻作品を制作する。
ふたりは2000年から共同制作を開始。当初から手がけていたアニメーションのシリーズは《9才までの境地》という作品として帰結し、11年にはタカ・イシイギャラリーで展覧会「9才までの境地、そのころの日射し」を行った。
これまで国内外で数多くのグループ展にも参加してきたふたりは近年、Reborn-Art Festivalでも作品を発表している。17年には、宮城・牡鹿半島にある小さな無人の浜に、京都から持ち込んだそれぞれの作品や、土や樹皮などその場で採取した材料からつくった作品など、様々な「つくられたものたち」を混在させた空間《浜と手と脳》を展開。
また19年には、網地島でかつての駄菓子店をなおし、島の空き家で発見したものに様々な手を加えた商品を販売する店《メタモルフォーセス》、もともと島の漁師が畑として使っていた土地で島の資源を活かしながら、一から作物をつくるように制作された作品《海に浮かぶ畑》を発表した。
「メタモルフォーセス」に並ぶ商品は、青木と伊藤によって依頼された様々な土地・職業の人々が、アイデアや技術を提供することで完成したもの。「人がつくる」ことの可能性を広げるとともに、「つくるをふやす」ことへと展開するような作品となった。
本展では、これまでの共作を展観するとともに、店から始まった様々な人との流動をワークショップ的に展開。ささやかな事象から人の手の不思議や自然との対話、時間を超えた普遍性までを見せるふたりの実践に触れてみたい。