首くくり栲象(くびくくり・たくぞう)の名を聞いたことはあるだろうか。
古澤栲(本名・守)は1947年群馬県生まれ。18歳で上京の後に路上やギャラリーでのパフォーマンスを行い、松澤宥や高松次郎といったアーティストの薫陶を受けた。「首吊り」を始めたのは70年代。50歳を迎えた頃からは20年以上にわたって毎日のように自宅の庭である「庭劇場」で首を吊り続け、2018年3月、肺がんのためこの世を去った。
そんな首くくり栲象の姿を追った宮本隆司の写真・映像と、余越保子による映画の上映からなる特別展示が小山登美夫ギャラリーで開催される。
宮本は建築解体現場を撮影した「建築の黙示録」や、阪神・淡路大震災後の神戸を撮影した「震災の亀裂」などのシリーズで知られる写真家。首くくり栲象を撮影した『宮本隆司:首くくり栲象』(BankART1929、2018)は、宮本にとって初の人物写真集となった。本展ではその写真に加えて、宮本による映像作品も見ることができる。
余越による映画『Hangman Takuzo』は、瀬戸内海の小島に建つ廃屋で撮影されたドキュメンタリー作品。首くくり栲象とそのパートナーであった振付家・ダンサーの黒沢美香、そしてふたりが尊敬してやまないダンサー・川村浪子が出演している。
これらに加え、会場では首くくり栲象を名乗るまでの活動資料や、羽永光利による写真作品を展示。「死に触れず、死を作品化する、あるいは生に触れず、生を作品化することはできるはずだ」と語った首くくり栲象の表現を、この機会に目撃したい。