李晶玉(リ・ジョンオク)と鄭梨愛(チョン・リエ)による展覧会「35th parallel north」が東京・小金井アートスポットシャトー2Fで行われる。
李は、写実的な描写を特徴とする作品を制作、絵画=事物の表面という意識から、その裏面に潜む固定観念をあぶり出す試みを続けてきた。近作では、現実と虚構の関係を作品化し、「構造体のなかに生きる在日としての自覚」をテーマに制作を展開している。
鄭は、在日一世である祖父の肖像を通して個人と歴史の関係性を探りながら、定型化された歴史のストーリーと個人の肉体的な感覚を連結。歴史の語り方に疑問を投げかけている。近作では、祖父のオーラル・ヒストリーから韓国の近代史をリサーチするととも に、「歴史」「記憶」「語り」が混在する物語の、実存のための紡ぎ方を模索している。
2人は2018年3月に朝鮮大学校研究院総合研究科美術専攻を卒業し、東京を拠点に作品を発表。大学在学中により日本の美術界に「在日」アートを介入させてきた。2人が参加した展覧会「突然、目の前がひらけて」(2015)は、隣接する朝鮮大学校と武蔵野美術大学の2つの展示室を会場に、両大学の区隔壁をつなげる橋を仮設したことで話題を呼び、17年にはその続編にあたる「境界を跨ぐと、」を東京都美術館のセレクション展で開催。同世代の作家たちと対話を続けながら、自身の現在地を探ってきた。
本展では、2人がそれぞれ舞台演出のような装置を会場に置き、まったく異なる風景が違和感を保ちながら存在する、1つの舞台を思わせる「虚構的風景」を出現させる。会場には李の描いた大画面の空と、鄭のインスタレーションによる麦畑、富士山と檀の木、行進する捕虜、鳥居とブラウン管テレビが全景を成す奇妙な風景が立ち上がる。