フランス象徴主義を代表する画家ギュスターヴ・モロー(1826〜1898)。東京・汐留のパナソニック 汐留ミュージアムで開催される「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」展は、パリのギュスターヴ・モロー美術館の所蔵作品のなかから、女性をテーマにした作品を一堂に集め、身近な女性からファム・ファタル(宿命の女)まで多様な女性像を紹介し、新たな切り口でモロー芸術に迫るものだ。
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モローは産業の発展によって現実主義的、物質主義的な潮流にあった19世紀後半のフランスにおいて、神話や聖書を主題としながら独自の理念や内面世界を表現した象徴主義の画家。妖艶で魅惑的な女性像を数多く手がけ、《出現》(1876頃)など、洗礼者ヨハネの首を所望するヘロデ王の娘サロメを描いた一連の絵画はファム・ファタルのイメージを決定づけるものとなった。
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本展は「モローが愛した女たち」「《出現》とサロメ」「宿命の女たち」「《一角獣》と純潔の乙女」の4章構成。ファム・ファタルとしての女性の他に、誘惑され破滅へと導かれる危うい存在としての女性、モローが実生活で愛した母や恋人など、彼の現実と幻想の世界に登場する様々な女性を採り上げ、その絵画表現や創作のプロセスに注目する。
ギュスターヴ・モロー美術館全面協力のもと、《出現》や《エウロペの誘拐》(1868)、《一角獣》(1885頃)などモローの代表作を含む油彩、水彩、素描など約70点が揃う本展。モローの幻想的な世界を堪能したい。
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