愛と親密さを探る。パトリシア・ピッチニーニとジョイ・ヘスターの2人展がメルボルンのタラワラ美術館で開催中

オーストラリアを代表する女性アーティスト、パトリシア・ピッチニーニとジョイ・ヘスターの2人展「Patricia Piccinini and Joy Hester: Through love…」がメルボルン郊外のタラワラ美術館で開催されている。会期は3月11日まで。

展示風景より Photo by Rick Liston

 オーストラリア・メルボルン郊外にあるプライベート・ミュージアム、タラワラ美術館では、オーストラリアを代表する女性アーティスト、パトリシア・ピッチニーニとジョイ・ヘスター(1920〜60)の2人展「Patricia Piccinini and Joy Hester: Through love…」が開催されている。

 1965年に西アフリカのシエラレオネ共和国に生まれ、現在メルボルンを拠点に活動しているピッチニーニ。彫刻やインスタレーション、写真、ビデオ、ドローイングなどを介し、人工と自然の境界がぼやけていくこと、そしてそれが人間の身体とほかの生物との関係にどのような影響を与えるかを検討する作品を中心に、制作を行ってきた。

 いっぽうのヘスターは、メルボルンのアーティストグループ、「アングリー・ペンギンズ」の一員で、筆と墨の描画によって情熱や孤独といった極端な感情を呼び起こす作品で知られている。

パトリシア・ピッチニーニ Skywhale 2013 Courtesy of the artist and the Australian Capital Territory Government. Courtesy the artist, Tolarno Galleries, Melbourne and Roslyn Oxley9 Gallery, Sydney. Photo by Rick Liston

 会場の入り口では、2013年に首都キャンベラの100周年記念のために制作されたピッチニーニの代表作のひとつ、34メートルに及ぶ熱気球《Skywhale》(2013)が展示されている。

展示風景より、手前はパトリシア・ピッチニーニ《The Young Famil》(2002) Courtesy the artist, Tolarno Galleries, Melbourne and Roslyn Oxley9 Gallery, Sydney. Photo by Rick Liston
展示風景より、手前はパトリシア・ピッチニーニ《Kindred》(2018) Courtesy the artist, Tolarno Galleries, Melbourne and Roslyn Oxley9 Gallery, Sydney. Photo by Rick Liston

 本展では、《The Young Family》(2002)や《Nest》(2006)、《Doubting Thomas》(2008)などピッチニーニの代表作から最新作《Kindred》(2018)《Sanctuary》(2018)、ヘスターの代表作《Love》シリーズ(1949)や《Lovers》シリーズ(1955-56)など、50点以上の作品を紹介。ロマンティックな愛や母性の献身から、人間と動物、そして生物と無生物の間のつながりまでを示している。

 同館館長で本展のキュレーターでもあるビクトリア・リンは、次のように語っている。「これは、ジョイ・ヘスターとパトリシア・ピッチニーニの作品の類似点を探る初の展覧会であり、ヘスターの表象的なインク肖像画をピッチニーニの人間や非人間、そしてそのミックスを表現した作品とを関連させたものです」。

展示風景より、手前はパトリシア・ピッチニーニ《Doubting Thomas》(2008) Courtesy the artist, Tolarno Galleries, Melbourne and Roslyn Oxley9 Gallery, Sydney. Photo by Rick Liston
展示風景より、手前はパトリシア・ピッチニーニ《Doubting Thomas》(2008) Courtesy the artist, Tolarno Galleries, Melbourne and Roslyn Oxley9 Gallery, Sydney. Photo by Rick Liston

 ピッチニーニは本展について、「ジョイ・ヘスターの作品は、私の初期の作品に影響を及ぼしました」とコメント。「人物が互いに融合して一体になっていく彼女の境界なき親密な描写は、アイデンティティや自己意識を探求するという私の願望、そして私がこれまでのキャリアの中で一貫してきた主題を示してくれました」。

 なお、会期中にはピッチニーニによるレクチャーなどのパブリックプログラムも実施予定。本展の作品について作家に直接に聞く貴重な機会となる。

編集部

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