増山士郎は1971年神奈川県生まれの美術家。インスタレーション、パフォーマンス、映像といった多様な表現メディアを駆使しつつ、都市や人々の生活空間に介入するようなアートプロジェクトなどで知られる。
2010年より、イギリス・北アイルランドのベルファストを拠点に活動。これまでにアイルランド現代美術館やオーストラリア応用美術館(MAK)での展示経験を持つなど、国内外問わず精力的に活動を行っている。
アイルランドとイギリスの民族・宗教対立による紛争がいまもくすぶるベルファストにおいて、マイノリティの日本人として増山自身が被る問題を、巨大なジオラマや映像とともに可視化した《The Heart Rocker》(2011)や、日本におけるアーティスト生活の厳しい現実をとらえた《アーティスト難民》(2009)などのプロジェクトには、アーティストを取り巻く同時代の政治や社会状況に対する鋭い批評精神が見受けられる。
今回、京都のANEWAL Gallery 現代美術製作所で開催される個展「Tokyo Landscape 2020」は、東京オリンピックと原発事故をめぐる状況が露わにする日本社会の歪んだ風景をもとにインスタレーションを中心に構成。展覧会タイトルが示す通り、2020年に東京オリンピック開催を控えた現代日本へのアイロニーを強く含む。
加えて、様々な日用品をコンクリートで石棺化したオブジェや、11年時に東京から福島まで放射線量を測りながら行った自動車旅行のドキュメント映像も見ることができる。なお本展は、京都の会期終了後、東京・吉祥寺のArt Center Ongoingに巡回。
力強く透徹した増山の作品世界は、人々の無関心さや欲望の顕在化を浮き彫りにし、今日の社会を再考する機会を鑑賞者に与えることを目指す。