写真芸術の先駆者・杉浦邦恵の
回顧展が東京都写真美術館で開催。
50年以上にわたる
「うつくしい実験」とは?

「杉浦邦恵 うつくしい実験 ニューヨークとの50年」展が、東京・恵比寿の東京都写真美術館で開催される。本展は、国際的に活躍する写真家・杉浦邦恵の50年を超える軌跡をたどるもの。会期は7月24日〜9月24日。

杉浦邦恵 (レントゲン)棚のインスタレーション ゼラチン・シルバー・プリント、アクリル板、金属製棚 作家蔵

 杉浦邦恵は1942年名古屋生まれの写真家。63年に単身渡米し、シカゴ美術館附属美術大学で写真を専攻。現在、杉浦の作品はニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、ボストン美術館、東京国立近代美術館、東京都写真美術館など、国内外問わず多くの美術館で所蔵されている。

 シカゴに留学していた60年代当時、アートスクールでは絵画や彫刻が主流とされており、写真を専攻する学生は杉浦を除いてほとんどいなかったという。しかし杉浦は、「表現としての写真」の可能性に注目。魚眼レンズによる歪み効果の使用や、人物と風景のモンタージュ、ソラリゼーション(現像時に露光をある程度過多にすることによって、モノクロ写真の白と黒が反転する現象のこと)、モノクロとカラーネガを併用するなど、制作プロセスを重視した実験的手法によって写真表現を探求していった。

杉浦邦恵 電気服にちなんで Ap2 黄色  2002  黄色で調色されたゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

 67年にニューヨークに拠点を移してからは、写真の伝統や因習を破ることを試みていく。アクリル絵具やキャンバスを作品に取り入れるなど、写真と絵画を融合させるような手法を展開。その一方で、「写真は光によって描かれるメディアである」という根源的な視点に立ち帰りながら、伝統的な写真の手法をもとに、植物、動物、人間へとモチーフを発展させ、独自の様式を生み出した。

 「杉浦邦恵 うつくしい実験 ニューヨークとの50年」展は、杉浦の50年を超える写真家人生をたどる回顧展。杉浦作品が持つ写真表現の先駆性と独自の世界を体感してほしい。

杉浦邦恵 飛び跳ねる D ポジティブ 1996 黄色で調色されたゼラチン・シルバー・プリント 作家蔵
Courtesy of Taka Ishii Gallery

編集部

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