ジョン・オーは、1981年アフリカのモーリタニア生まれ。針金や糸などの素材から、繊細で幾何学的な彫刻を制作しており、展示空間に呼応するサイトスペシフィックな表現を特徴としている。School of Visual Art in New York, MFA取得。以後、デコルドバ彫像公園・博物館(アメリカ)、世宗文化会館(韓国)、ソウル市立美術館(韓国)などでグループ展に参加し、国際的に活動している。
いっぽうのハン・ジンスは、71年韓国・ソウル生まれのマルチメディアアーティスト。反復動作をしながら詩的な変化を探索するキネティックな彫刻作品を制作している。機械化された彫刻は、ユニークなパフォーマンスを行い、鑑賞者に没入感のある体験をもたらす。ソウル市立美術館など韓国の主要美術館や、中国やアメリカをはじめとした数多くのギャラリーでの展示など国際的に活動をしている。2005年には、日本国際博覧会「愛・地球博」のアートプログラムにも参加した。
そんなふたりによる展覧会「Every Day IS A Good Day ― 日々是好日」が、東京・青山のスパイラルガーデンにて開催される。本展はスパイラルと、ニューヨークのコンテンポラリーアートギャラリーであるマーク・シュトラウスの共同開催だ。マーク・シュトラウスは11年に設立されたギャラリーで、国際的かつ優れた才能を発掘育成し、現在12ヶ国18名のアーティストが所属。14年、美術雑誌『Flash Art』により「世界のTOP100ギャラリー」に選出された。
スパイラルとマーク・シュトラウスが共同で開催する背景には、次のような経緯がある。スパイラルが企画制作を担当した、05年の「愛・地球博」アートプログラムにハン・ジンスが参加したところから親交が始まる。その後16年にスパイラルのキュレーターがマーク・シュトラウスを訪問し、ケン・タンのキュレーションによるハン・ジンスとジョン・オーの展覧会『The Apotheosis Of The Fish Market』を見たことから、ミニマルアートや日本のもの派に影響を受けた2人の作品を日本でも紹介できないかと考え、本展の開催につながったという。
展覧会タイトルである「日々是好日」とは、人生は自己の経験に基づくため、どんな日もとらえ方次第で「毎日毎日が平和なよい日であること」という1000年以上昔に唱えられた禅語のひとつ。本展では、ふたりの作家がそれぞれの「日々是好日」と向き合い、会期中毎日表情が変化する作品をスパイラルガーデンの空間特性を活かして展開する。キュレーションは、マーク・シュトラウスのディレクターであるケン・タンが手がける。
ジョン・オーは、会期中に東京で見つけた様々なオブジェクトを毎日展示空間に追加していく滞在制作を行う。日常に潜む儚い美しさに細心の注意を払い、都市を感じながらオブジェクトを集めることで、その都市の個性が反映された作品を制作する。
いっぽうのハン・ジンスは、本展で白色の池に花びらを人工的に散り積もらせる。優雅に空中を舞い、池に散る花びらはやがて偶然からなる模様を描き出すという作品だ。作家は作品を通し、過ぎ去る瞬間を受け入れて楽しもうと来館者に問いかける。
増幅・拡張するジョン・オーの作品に対し、ハン・ジンスのインスタレーションは、日ごとに減退・減衰する様子を表現。それぞれが解釈した「日々是好日」を見ることができる。ふたりの作家とキュレーターのバックグラウンドであるソウル、モーリタニア、シンガポール、ニューヨークなどの様々な都市の情調が交錯しながら、日々変化していく作品を楽しめる展覧会だ。