すべての国民が1年に1回以上は旅行に行くとされる現代日本において、おみやげの贈答もまた、日常的なやりとりの一つとなっている。「ニッポンおみやげ博物誌」展では、おみやげが生まれる場所とその特質、おみやげと旅を経験する人々との関係、そして旅の果てにたどり着くおみやげの行方に注目した展覧会だ。
本展は、「アーリー・モダンの『おみやげ』」「観光地のブランド化とおみやげへの波及」「現代におけるおみやげの諸相」「旅の文化の多様化とおみやげの展開」「おみやげからコレクションへーおみやげの『消費』の行方にみる人とモノとのつながり」の5章で構成。
1章では旅や観光文化が発達した江戸時代に注目し、近代以後のおみやげに付与されていったいくつかの系譜を紹介。続く2章では、明治期と戦後にかけてみられた「旅」の目的をめぐる近代以後の制度の変遷と、その背景として人々のまなざしの所在を見ていく。法改正や世界遺産の登録制度などを通して、新たに「世界」クラスの規格も誕生した当時、観光地をどのようにブランド化していったのか、おみやげを通して検証する。
そして、様々な旅の目的や経験と結びつく現代のおみやげの諸相を紹介する3章、多様化する旅の目的とそれに関連した国内外の個性的なおみやげを取り上げる4章へ続き、最終章では、「おみやげはどこに行くのか」「そこにはどのような思いが託されているのか」という問いを下地に、様々なジャンルのおみやげとコレクターとの関係についても触れながら、人とモノと物語のつながりを再考するきっかけをつくる。
職場や家庭に持ちゆかれたおみやげたちは、どのようにふるまい、どのように扱われていったのか。消費され、利用され、保管され、あるいは忘却されるおみやげは、何を語り、何を表しているのかを考察する。