河井寬次郎は1890年島根県生まれの陶芸家。東京高等工業学校(現・東京工業大学)の窯業科を卒業後、京都市立陶磁器試験場で技手として陶器の研究に勤しんだ。
1921年に初個展を開催して以降、中国古陶磁の手法に基づいた精緻な作品で評価を得るが、次第に自身の作陶のあり方に疑問を抱いた寬次郎は、それまでの作風を一変させ、実用を重んじた力強い作品を生み出していく。
戦後は、色鮮やかな釉薬を用いた、重厚で変化に富んだ独自の作風を確立するいっぽうで、木彫やデザイン、詩などにおいて、実用にとらわれない自由で独創的な造形表現を展開。芸術性に富んだ作品群は、寬次郎の没後50年を超えてもなお、国内外で高い評価を受けている。
今回の回顧展では、京都の自邸であった河井寬次郎記念館の所蔵作品を中心に、初公開となる山口大学所蔵作品などの陶芸、木彫、書、調度類から約130点を紹介。寬次郎の初期から晩年に至るまでの仕事の全貌と深い精神世界をたどることができる。
さらに本展では、パナソニックの創業者・松下幸之助が寬次郎に文化勲章を推薦した際に贈った、当時の最新トランジスタラジオ「パナペット(R-8)」の同型品も特別出品される。