古典落語や寓話から
生み出される新しい物語。
小林耕平展「あくび・指南」

インスタレーションを中心に制作する作家・小林耕平の個展「あくび・指南」が東京・天王洲の山本現代で開催中。本展では、東西に古くから伝わる古典落語や寓話などから着想を得たドローイングや、小林とデモンストレーターがそれらを鑑賞した際の対話の記録映像が発表されている。会期は5月26日まで。

小林耕平 あくび・指南 イメージドローイング 2018

 小林耕平は1974年東京都生まれ。現在は埼玉県を拠点に活動している美術家だ。オブジェクトやドローイング、テキストが相互作用し合う軽妙なインスタレーションや、パフォーマンスや対話の様子を記録した映像作品で空間を構成するもの。見る者を能動的な鑑賞へ誘う作風で知られる小林の作品は、近年では豊田市美術館や韓国国立現代美術館にも収蔵されている。

 「あくび・指南」と題された本展は、「モノや出来事を寓話の構造を借りながら鑑賞する方法を探る」「既存の寓話を解体し、新たな寓話としての物や事を展示空間で起こす」ということをテーマに、寓話で示されるような教訓や秩序から解放され、まったく新しい視点を得ようと試みる。

 展覧会タイトルにも引用されている「あくび指南」という古典落語をはじめ、東西に古くから伝わる寓話などから着想を得た新作は、「モノ」であるオブジェクトやドローイング数点と、小林とデモンストレーターがそれらを鑑賞した際の対話の記録映像によって構成。

 本展をイメージしたドローイングは、ロシアの作家イヴァン・クルイロフの寓話『白鳥と川魳(かわかます)と蝦(えび)』から着想を得たもの。古今東西で語られる寓話はそれぞれ「教訓」や「モラル」が暗示されているのに対し、教訓めいたものは提示されていない落語について、「見る者が秩序の外へ放り出される感覚」を受けた小林は、元の寓話とはまったく新しい別の場面を描こうと試みた。

 本展では、「異なる秩序が部分的に置き換わることで、体系が崩れてしまったり、または新たな秩序が形成されたり、両局面あることが重要だ」との考察から、モノ、行為、言語の認識をめぐって生まれる可能性をさらに深く探っていく。

編集部

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