父・暁斎から娘・暁翠に引き継がれた伝承とは? 暁斎の多彩な画業の本質に触れる「暁斎・暁翠伝」が開催中

狩野派絵師である河鍋暁斎とその才能をひきついだ長女・暁翠に焦点を当てた「暁斎・暁翠伝─先駆の絵師魂!父娘で挑んだ画の真髄─」が東京富士美術館で開催されている。会期は2018年4月1日〜6月24日。

河鍋暁斎 横たわる美人と猫(部分) 河鍋暁斎記念美術館蔵

 幕末から明治前半にかけ、江戸の画壇で活躍した狩野派絵師である河鍋暁斎。昨今、高い人気を集めており、話題の展覧会も次々と開催されている。

 暁斎は様々な画派を貪欲に学びながら幅広い作風と領域で活躍。いっぽう、その長女である暁翠は、柔らかで色彩豊かな美人画や小児図を得意とし、時には暁斎と同様の勇壮な、あるいはユーモラスな作品をも描いた。

 暁斎は伝統的な狩野派修業を自らのものとしながら、新しい画法や表現、主題にも積極的に取り組んでいく先取の気風に溢れていた。弟子にイギリスの建築家・コンドルがいたことも有名だが、暁斎の絵師としての活発で先駆的な活動が、同時代に海外で一躍有名になった一つの要因であろう。娘・暁翠が初期の女子美術教育に携わっていたことも、暁斎の多方面での活動と通じる部分がある。

河鍋暁斎 極楽太夫図 河鍋暁斎記念美術館蔵

 河鍋家には、暁斎の非凡な技量をうかがわせる3000枚を超える貴重な下絵をはじめ、江戸末期から伝来している作品・資料が多く残っている。暁斎を暁斎たらしめた世の中に残る逸話、家族が間近に見た暁斎・暁翠の姿、実際の交流、文明開化の時代の進歩的な思想などの真実が、河鍋暁斎記念美術館を設立した曾孫・河鍋楠美によって明らかにされている。

 

河鍋暁翠 羽衣 河鍋暁斎記念美術館蔵

 「暁斎・暁翠伝」展は、「プロローグ 絵師・暁斎の源流」「第1幕 暁斎伝」「間奏 暁斎・暁翠、父娘二代の能・狂言画」「第2幕 暁翠伝」「エピローグ 現代に伝えられる暁斎」で構成。暁斎を暁斎たらしめた伝説的なエピソードとともに、本画や浮世絵、挿絵や能・狂言画、席画などこれまで部分的に紹介されてきた暁斎を改めて総合的に展望でき、娘・暁翠に受け継がれ伝えられたその画業の伝承までを網羅できる。いままで展示されたことのない暁斎・暁翠のコラボレーション作品、暁斎が暁翠に与えた絵手本なども展示されている。

 最後のエピローグでは、近年再認識されている暁斎の魅力を紹介。1993年に大英博物館で開催された暁斎展で、子供たちがワークショップで制作した作品の記録なども見ることができる。

河鍋暁翠 七福神入浴図 ポスター 河鍋暁斎記念美術館蔵

 数々の作品と、伝承された逸話と当時のタブーに触れた真実を重ね合わせることで、暁斎の多彩な画業の本質に迫りたい。

編集部

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