多くの島々からなる沖縄は、かつて「琉球」と呼ばれた海上王国であった。400年以上にわたって東アジアを中心に、万国津梁(世界の架け橋)として繁栄した琉球王国は、周辺諸国の至宝で満ち、新たに独自の美を拓いた。
その琉球で生み出された美術・工芸品の数々を紹介する「琉球 美の宝庫」は、「染織」「絵画」「琉球国王尚家」「漆芸」の4章で構成。華やかな紅型(びんがた)の染織や、中国と日本から影響を受けて描かれた琉球絵画、箔絵などの技法を用いたきらびやかな漆芸作品を通覧することができる。東アジアの美を結び、文化の多様性と新鮮な魅力をもつ琉球美術を総合的にとらえ、その実像と歴史的背景に迫っていく。
豊かな風土をもち、海上交易を通じて芸術文化を発展させた琉球王国は、とくに染物や織物の分野で、中国や東南アジアの技法や素材を影響を強く受けた。部分的に染め分けた糸を織って生み出された幾何学的な文様や、糸を浮かせて文様を表現している花織からは、美しい色彩世界とデザインを存分に楽しむことができる。
また、近世琉球期(1609〜1879)に描かれた作品を「琉球絵画」として紹介。第二次世界大戦の戦禍をくぐりぬけ、現代に守り伝えられた琉球絵画は、私たちに深い洞察を与えてくれるだろう。さらに、国宝に指定されている「琉球国王尚家関係資料」のなかから特別公開される「王冠」なども見どころのひとつだ。
琉球王国を代表する美として花開いた「漆芸」で、本展は締めくくられる。「沈金」や「箔絵」、漆と顔料を混ぜた材料を貼って立体的に文様をあらわす琉球特有の「堆錦」など、様々な技法が駆使された作品群にも注目したい。