春秋時代末期から戦国時代(紀元前5~前3世紀)にまで遡る、中国のガラスの起源。当初は主に儀式にまつわる璧や剣装、あるいはトンボ珠や環などの装飾品が多く、貴石や玉の代用品の役割を果たしていた。
1696年、第4代康煕帝が紫禁城内にガラス工房を設置し、皇帝のためのガラスづくりを開始したことを契機にガラス工芸が飛躍的に発展。第5代雍正帝、第6代乾隆帝の治世には、バリエーションも豊かに栄華を極めた。
透明性、はかなさを特徴とするガラスだが、特に最盛期の清朝のガラスは「透明」と「不透明」の狭間の、重厚で卓越した彫琢が特徴。その美しさは、フランス・アール・ヌーヴォー期を代表する芸術家エミール・ガレをも魅了し、ガレの造形に取り込まれていった。
サントリー美術館で4月25日から始まる「ガレも愛したー清朝皇帝のガラス」展は、中国ガラスの始原を紹介する「プロローグ:中国ガラスの始原」、清朝ガラスの輝かしい発展の幕開けとなる「第1章:皇帝のガラスの萌芽―康熙帝・雍正帝の時代(1696-1735)」のほか、「第2章:清王朝の栄華―乾隆帝(1736-95)の偉業」「第3章:エミール・ガレと清朝のガラス」「エピローグ:清朝ガラスの小宇宙(ミクロコスモス)」の5部で構成。
イギリスのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館から来日する作品群と有数のコレクションを通して、ガレの作品とも比較しながら、清朝皇帝のガラスの美を堪能することができる。