重厚な存在感。
岡村桂三郎の大規模個展が
平塚市美術館で開催

独自の手法で大作を生み出してきた作家・岡村桂三郎の大規模個展が平塚市美術館で開催。本展は、2008年の神奈川県立近代美術館での個展以来、県内では10年ぶりとなる大規模個展となる。

岡村桂三郎 百眼の魚 18-1 2018 Photo by SUEMASA Mareo

 1958年に東京で生まれた岡村桂三郎は、20代で山種美術館賞優秀賞を受賞するなど早くから頭角を現し、常に注目を集めてきた。その独特の風合いを持った造形は、バーナーで焦がした巨大な杉板に方解末(日本画用の天然岩絵具)を塗り重ね、木炭でモチーフのかたちを取り、それをスクレーバーでうろこ状に線刻するといった特異で複雑な手法によって生み出される。

 このようなオリジナリティあふれる造形行為によって、従来の日本画と一線を画すような物質感と重厚さを獲得した岡村は、第4回芸術選奨文部科学大臣新人賞(2004)、第4回東山魁夷記念日系日本画大賞(2008)、第18回MOA岡田茂吉賞MOA美術館賞(2012)を受賞するなど、活躍を続けている。

岡村桂三郎 群山龍図 17-1 2018 作家蔵 Photo by SUEMASA Mareo

 屏風状に連ねた巨大な杉板パネルに描かれるモチーフは、象や鳥、巨大な魚のほか、龍や迦楼羅(かるら)などの神話的動物だ。不思議で荘厳な蠢きを見せるその形態は、圧倒的なスケールで観る者に迫り、豊かな生命力を感じさせる。岡村は、「自然と人間の接点に芸術や宗教が存在する」という考えを制作の基盤にし、自然界が持つ生命力や、その豊かさから着想を得ることで、神話のようなオリジナルイメージを生み出し続けている。

岡村桂三郎 白象図 16-1 2018 提供=コバヤシ画廊 Photo by SUEMASA Mareo

 本展では、今回のために制作された新作のほか、旧作、近作を含む約30点を紹介し、岡村の画業の変遷をたどる。まるで自然と人間との交感を想起させるような世界観を楽しみたい。

編集部

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