ブリューゲルからマグリットまで、ベルギーの奇想の系譜をたどる

フランドル美術を代表するブリューゲルやルーベンス、シュルレアリスムのマグリットなど、“奇才”を生み出してきたベルギー美術。7月15日から、ベルギーやその周辺地域の500年にもわたる絵画史を一望する展覧会「ベルギー 奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」が、Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)で開催される。

ヒエロニムス・ボス工房 トゥヌグダルスの幻視 1490-1500頃 板に油彩ラサロ・ガルディアーノ財団 © Fundación Lázaro-Galdiano

 中世末期より、写実的描写と幻想的なテーマによって、空想豊かな想像上の世界を生み出してきたベルギー絵画。その「奇想」の系譜は、鮮烈なイメージで地獄を描いたヒエロニムス・ボス(1450〜1516)に始まる。ボスの没後も、怪物や悪魔の世界に親しみやすさや日常性を加えたピーテル・ブリューゲル(父)(1525/30〜69)などによって、「奇想」の系譜は後世の画家に脈々と受け継がれていき、17世紀には、バロック美術最大の巨匠ルーベンス(1577〜1640)が登場。激しい感情の表出としての「奇想」の表現を開花させていった。

 1830年、国家として独立を果たし、工業化と都市化が進行したベルギー。そんななかで、科学の時代と逆行し、数々の“死の文学”に挿絵を寄せたロップス(1833〜98)、暗示に満ちた静謐な作品を手がけたクノップフ(1858〜1921)、しばしば骸骨や仮面を描いたアンソール(1860〜1949)といった、想像力と夢の世界の表現を試みる画家たちが現れる。

 20世紀に入ると、「奇想」の系譜はさまざまな芸術の領域に拡大を続ける。既存のイメージを異常な関係性に置き、ものの固有の意味を解体させたシュルレアリスムのマグリット(1898-1967)、非現実的な場所でさまよう裸婦や骸骨を描いたデルヴォー(1897-1994)。そして現在では、15〜16世紀の宗教画や歴史的な出来事から主題やイメージを抽出し、昆虫や動物を介在させた現代美術作品を制作するヤン・ファーブル(1958-)といった芸術家たちが、活躍を続けている。

 本展では、「15〜17 世紀のフランドル美術」「19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派・表現主義」「20世紀のシュルレアリスムから現代まで」の3章で展示を構成し、16世紀のフランドル絵画から、19世紀の象徴派、そして現代美術作品にいたるまで、ベルギー美術における「奇想」の表現を通覧できる。

編集部

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