「綿のように美しい」と称えられた多色槢の浮世絵木版画「綿絵」は、江戸時代の庶民を大いに沸かした。浮世絵師・歌川国貞(1786〜1864)は、江戸時代後期から末期にかけて活動。若くから頭角を現し、三代豊国を名乗ってからは多くの門人を率いた。
なかでも美人画と役者絵を得意とした国貞。静嘉堂文庫美術館で8年ぶりの国貞展となる本展では、大首絵や風俗画など、多彩な作品を展覧。登場人物もさまざまで、吉原に住む5人の女性の各階層の立ち居振る舞いを艶やかに描いた《北国五色墨(花魁)》から、鼻高(はなたか)幸四郎の異名を持つ、歌舞伎役者の五代目松本幸四郎を表した《仁木弾正左衛門直則 五代目松本幸四郎 秋野亭錦升 後 錦紅》まで、静嘉堂が誇る国貞が描く"粋な仲間たち"が一堂に集結する。
光に当てることなく保存されてきた静嘉堂の錦絵。会場では、その名の由来となった鮮やかな色彩を保持した作品が展示される。江戸情緒を湛えた代表作を一挙公開する本展で、江戸の人々の日常を垣間見ることができるだろう。