京都らしさを体現する要素
──「BAMBOO」のセクションでは、グッチのアイコンである「グッチ バンブー 1947」が日本のアーティストたちによってアップデートされた作品が並びます。こうしたコラボレーションの意義について教えてください。
まず素晴らしいことだと思います。いまの時代、ファッションとアートは互いに直接的な協力関係を築くというケースが当たり前のことになってきています。ファッションもアートも、それぞれがひとつのシステムとして存在していると思いますが、互いに相手を見ながら、平行に進んでいくような関係ですね。だからいま、クリエイティブ・ディレクターが好きなアーティストとコラボレーションするのは自然な流れでしょう。
サバト自身もアートが大好きであり、アーティストたちが「グッチ バンブー 1947」のうえにどのような世界をつくり上げるかは興味深いチャレンジでした。グッチとアーティストたちがお互いを尊重しながら挑戦する、素晴らしい機会となったと思います。
そして今回、私たちがこの展覧会で京都とグッチのあいだにある深い関係性を称揚したいと思ったことも大きいですね。京都はグッチが誕生したイタリアのフィレンツェと姉妹都市でもあり、その関係を「BAMBOO」の部屋などに宿したかったのです。京都もフィレンツェも歴史的な都市であり、このような機会に恵まれたことを嬉しく思っています。
──加えて、今回の展覧会で非常に象徴的なのは、京都市京セラ美術館のコレクションとのコラボレーションだと思います。
私はもともとフィレンツェで美術史を専攻しており、ルネサンスも現代美術も大好きなのです。だから、私にとって美術館の中でファッションの展覧会をキュレーションするというのは特別な経験だと感じています。
私が初めてこの美術館を訪れたとき、そのコレクションを見せていただく機会に恵まれました。本当に素晴らしいクオリティーで、大変感激したことを覚えています。作品の繊細さに心打たれ、すぐに美術館の方に、「展覧会の中にコレクションの一部を使わせてください」とお願いをしたのです。
それは「LEISURE LEGACY ライフスタイル讃歌」というセクションに結実しています。例えばゴルフをする若い女性をモチーフにした丹羽阿樹子の《ゴルフ》(昭和初期)や、海辺で休む女性を描いた中村研一の《瀬戸内海》(1935)、そしてグッチの馬具とも接続するような素晴らしい馬を描いた菊池契月の《紫騮》(1942)などです。それらをグッチのレジャーグッズと組み合わせて展示するということは、とても自然な選択となったのです。
──では最後の質問です。ファッションの展覧会を美術館という公的な場で行うことに、どのような意義があると考えますか?
本当はその質問だけで1時間くらいお話したいのですが、短くしますね(笑)。こうした展覧会を公共の美術館、つまりコミュニティに属する場所で行うことはとても重要なことだと思います。公的な美術館にファッションが入っていくということは、現代の文化として認められるという意味で重要だと思います。
とある有名なキュレーターの言葉ですが、ファッションと芸術の差異や似ているところを言ってもそれはあまり意味がなく、ともにビジュアルカルチャーの地平を共有しているのです。それが、こうしたファッションの展覧会を美術館で開催できることにつながっているのだと私は思います。
- 1
- 2