アンビエント・ミュージックの先駆者にして、デヴィッド・ボウイやU2らとの革新的なコラボレーションでも知られるブライアン・イーノ。その創作は音楽にとどまらず、アートや映像、さらには哲学的思考にまで広がっている。そんな彼の足跡をたどりながら、創造性とは何か、芸術とは何かを改めて問い直すジェネレーティブ・ドキュメンタリー映画『Eno』が誕生した。
本作が画期的なのは、イーノの人生と思想を描くだけでなく、その構造そのものが生成的であるという点だ。上映されるたびに異なる映像が現れ、同じバージョンは二度と存在しない。編集作業はアルゴリズムによって行われ、観客が目にするのは、無数に存在する可能性のうちのたったひとつ。まるで意識の流れをたどるかのように、断片的な映像がリアルタイムで再構成されていくその様子は、まさに「流動する映画」と言えるだろう。
監督を務めたギャリー・ハストウィットは、本作を「創造性についての映画」だと語る。インタビューを通じて見えてきたのは、映画という形式の限界を超えようとする野心と、イーノという稀有なアーティストの哲学的かつ実践的な創造のプロセスを映し出す誠実なまなざしだった。
映画『Eno』は7月11日より一般公開予定。本稿では、その構造的革新性と、ブライアン・イーノという人物の深層に迫るインタビューをお届けする。

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