ワシントンD.C.の中心部の国立公園、ナショナル・モールに位置するスミソニアン国立アジア美術館は、アジア美術とアジア系米国人の芸術と文化を専門とする美術館であり、昨年はその設立100周年を迎えた。
2018年12月より館長を務めるチェイス・ロビンソン氏の指導のもと、同館は多くの新たなイニシアティブを立ち上げ、世界中から年間数十万人の来館者を迎え入れている。ロビンソン館長は、同館をたんなる収蔵品の展示場に留まらず、国際的な文化交流と学術研究の中心地へと発展させることを目指している。「未来は蓄積ではなく、協力にある」という理念のもと、国内外の多くの機関と連携し、共同展覧会や共同研究を通じて、文化的な理解と交流を深めている。
今回のインタビューでは、同館の現状と未来のビジョンについて、とくにその協力的なアプローチが同館に与えた影響、またアジア美術に対する米国内の理解と関心の変化などについて話を聞いた。ロビンソン館長の洞察を通じて、21世紀の美術館にとっての課題と機会についても明らかにしていきたい。
日本コレクションが約3分の1を占める米国最初の国立美術館
──まず、スミソニアン国立アジア美術館について簡単にご紹介いただけますか?
私たちは、最初の国立美術館として1923年5月に開館しました。これは、ナショナル・ギャラリーが開館する約15年前のことです。しかし、実際の歴史は1906年にさかのぼります。その年、デトロイトの実業家チャールズ・ラング・フリーアが、そのコレクションをスミソニアン協会に寄贈する契約を結びました。当時、コレクションは約2000点でしたが、1919年に彼が亡くなった時点では約9500点に達していました。
彼のコレクションは、主に1880年から1919年にかけて収集された東アジアの資料です。この時期は、こうしたものがあまり収集されていなかった時代であり、歴史的な変革の時期でもありました。フリーアは、当時市場に初めて出回った元朝や宋朝、明朝初期の中国絵画、翡翠や青銅器、中国の彫刻や陶器、日本側ではとくに絵画や陶器など、多くの分野で無類のコレクションを築き上げました。
──日本美術コレクションの現状はどうですか?