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京都国際映画祭2017が開催!
懐かしさと未来がメイン会場で交差する

「京都国際映画祭」のアート部門メイン会場として活用されていた元・立誠小学校は、今年を最後に取り壊しとなる。多くの人々が学び、関わりあってきた空間で行われた、「生生流転」をテーマとするアート企画の様子をレポートする。

文=西井凉子(文化人類学)

メイン会場の元・立誠小学校。取り壊しが決定しており、今回が最後の会場使用となる。小学校は作品として見立てられ、建物の歴史やトピックスを紹介するキャプションが、校内の様々な場所に掲示された

今年が最後となるアート企画メイン会場の廃校が、時間の蓄積とともに作品へと転じる

 京都国際映画祭アート企画のメイン会場、元・立誠小学校を歩くと、木とワックスの懐かしい匂いがする。「ほけんしつ」「りかしつ」など、廃校になる前を再現するかのようなプレートが、教室の入り口に掛けられている。ぎしぎしと音のする階段を昇り降りしながら、展示作品を見てまわる。ところどころ壁がはがれ、理科室では水道の蛇口と陶器の洗面ボウルが、展示された陶芸作品と一体になっている。どこからどこまでが作品なのか、校舎なのか、わからなくなるような不思議な空間がつくり出されている。

過去に元・立誠小学校で展覧会を企画したことのある京都精華大学が開催した、陶器市の様子

 100年以上にわたり子供たちが学んできたこの校舎は、廃校になった後、年間100以上ものイベントが催される会場として機能してきた。だが、それも今年を最後に、取り壊しとなるらしい。廊下の突き当たりの壁3面いっぱいに、卒業生の集合写真がずらりと貼ってある。もっとも古い写真は明治22(1889)年。27人の子供と、保護者や教員とおぼしき人たちが写っている。そこから明治、大正、昭和の時代へと連なり、最後の平成8(1996)年の写真に写っている生徒は2人だけとなる。この会場には卒業生たちも多く訪れるという。「生生流転」というアート部門のテーマさながらに、多くの人々が学び、交わり、生きてきた空間は現在につながり、廃校となった校舎はアートを通して人々を集め、突き動かすような場になっている。そうした、場所と一体となった人々の思いが、あるときは土地神信仰にもなったのではないか、という思いを抱いた。

 アート部門を統括するアート・プランナー、おかけんたも、校舎からインスピレーションを受けたひとりであろう。校舎の内外20ヶ所以上に、小学校に関するキャプションを貼った。建物に蓄積された歴史を可視化することで、校舎そのものを作品にしたと言う。

 もうひとつの会場である京都芸術センターも、以前は多くの子供たちが学んだ小学校だった。廃校とアートが、懐かしさと未来の交錯する空間をつくり出している。

「東アジア文化都市 2017 京都」との連携企画として京都芸術センターで開催された、デジタル・アートのイベント「LIMITS」
ハワイ在住のアーティスト・ヘザーブラウンがジェイアール京都伊勢丹に展開した、ポップアップストアの様子

 (『美術手帖』2017年12月号「INFORMATION」より)

編集部

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