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なぜ美術館で抗議活動? 石油会社と美術館の蜜月関係の歴史

世界各地で起きている、環境活動団体による芸術文化施設での作品を標的とした抗議活動。10月には「ジャスト・ストップ・オイル」に関連するアクティビストらによる絵画への攻撃が何度も報道され、抗議活動はヒートアップを見せている。本稿では、イギリス国内で起きた抗議活動を振り返りながら、美術館と化石燃料企業の関係性に迫る。

文=加藤真由

2022年10月、環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル」のアクティビストがイギリスのナショナル・ギャラリーでフィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》にトマトスープを投げつけ、大きな騒動を巻き起こした © Just Stop Oil

 環境保護団体による芸術文化施設での抗議活動はいまに始まったことではない。イギリスで大きな注目を集めるようになったのは、2010年頃ではないだろうか。イギリスでもっとも有名な美術館のひとつに、テート(テート・ブリテン、テート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの4つの美術館の連合体)がある。このテートが石油会社から資金提供を受けていることに抗議する「リベレート・テート」という団体が設立されたのが、2010年だ。

 同年にはメキシコ湾原油流出事故が起きている。イギリスの石油大手BP社の石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」で天然ガスが爆発し、11人の死者が出ただけでなく、大量の原油がメキシコ湾へ流出したことで野生生物や自然環境に大きなダメージを与えた。流出した原油の収拾がついていないなか、BP社はテートへのスポンサーシップが20周年を迎えたことから、テート・ブリテンで盛大な記念パーティを開催。リベレート・テートのメンバーは、同じ目的を持った「グッド・クリュード・ブリタニア」のアクティビストたちとともに、会場入り口に石油を流し込み、鳥の羽根を振りまき会場を驚かせた。その様子は国内のメディアで取り上げられ、大きな注目の的に。アクティビストらは、環境破壊を引き起こす組織が芸術を利用してパブリックイメージの浄化を図っていることを訴え、その方法を「アート・ウォッシュ」と呼んだのだった。

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