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2021.7.24

アジアの次なるアートハブになるか? 中国・深センのアートシーンに迫る

香港と隣接する中国初の経済特区で、「アジアのシリコンバレー」とも呼ばれる中国広東省の深セン。そのアート市場やアートシーンの現状、そして今後の発展について関係者に話を聞いた。

文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

デザイン・ソサイエティ (C) Design Society
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 中国を代表するアートフェア「アート021」の主催者が、今年9月末に中国広東省の都市・深センで新たなアートフェア「DnA Shenzhen」を開催することを発表し、深センはアート界においてますます注目を集めている。

 2017年、ロンドンのV&A博物館は深センの美術館「デザイン・ソサイエティ」とパートナーシップを締結し、複合施設「海上世界文化芸術センター」に入居。また、パリのロダン美術館も深センに新しいアートセンターを設立することを発表しており、そのコレクションからロダンの作品を長期的に貸し出すという。

 深センには、深圳美術館、何香凝美術館、OCAT深圳館、深圳市当代芸術与城市規劃館など約60館の博物館・美術館があり、ここ数年間でアニッシュ・カプーアなどの国際的なアーティストの個展・グループ展が行われてきた。また、「芸術深圳」などのアートフェア、「深港城市\建築双城ビエンナーレ」や「OCATビエンナーレ」「深圳彫刻ビエンナーレ」などのビエンナーレ・芸術祭も定期的に開催され、深センのアートシーンにはつねに新風が送り込まれている。

新興富裕層が集結するマーケット

 もともと小さな漁村だった深センは、1980に鄧小平の「改革開放」政策により中国初の経済特区として指定され、40年で人口はわずか3万人から1700万人以上に成長している。その住民のほとんどは外部から流入されるため、平均年齢は約32歳で、中国国内では人口がもっとも若いメガシティと言われている。

深セン Photo by Darmau Lee on Unsplash

 アート021の共同設立者である包一峰(バオ・イフェン)は、「深センの若者たちでは、イギリスやアメリカなどに留学した経験のある人が多いため、彼らは比較的に新しいものを受け入れやすいし、より国際的なビジョンを持っている人たちだ。また、若い年齢層のコレクターは前世代のコレクターに比べて決断力があり、より多くの資金を美術品に使っている」と話している。

 香港に隣接する深センには、IT巨頭「テンセント」や通信機器大手「ファーウェイ」など中国の大手企業や銀行の本社が置かれており、「アジアのシリコンバレー」とも呼ばれる。2018年に深センのGDPは香港を上回る規模となり、21年の中国富豪ランキングのトップ500には、深センから58人がランクインされ、上海を上回る数字となった。

 包は、こうした深センの富裕層は「DnA Shenzhen」の潜在顧客だとし、深センのコレクターの特徴について次のように話している。