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2021.7.22

KAWSから横尾忠則まで。この夏に見たい大型展覧会ベスト10

今年の夏も大型展覧会が目白押しの首都圏。そのなかから、編集部がとくにおすすめしたい10の展覧会をピックアップした。

「横尾忠則」展示風景より、《滝のインスタレーション》(2019-21)
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「イサム・ノグチ 発見の道」(東京都美術館8月29日まで

 20世紀を代表する芸術家で、彫刻、舞台芸術、家具、ランドスケープデザインなど様々な分野で巨大な足跡を残したイサム・ノグチ(1904〜1988)。その芸術のエッセンスに迫る展覧会「イサム・ノグチ 発見の道」が、東京都美術館で開催されている。

第1章「彫刻の宇宙」の展示風景より、「あかり」のインスタレーション

 日本人の父とアメリカ人の母のもとに生まれ、アイデンティティの葛藤に苦しみながらも独自の彫刻哲学を打ち立てたノグチ。本展では、国内外の多数の大型作品をはじめ、30年以上に渡って取り組み続けられた光の彫刻「あかり」を含めて約90件の作品を3章構成で紹介。「彫刻とは何か」を追求したノグチの創造の軌跡をたどるものとなっている。

 とくに注目したいのは第3章「石の庭」だ。このセクションでは、ノグチが晩年を過ごした香川県高松市牟礼町のアトリエに残された複数の彫刻を初めて美術館で展示。長い造形的実験につながる「発見」の道行きの到達地である牟礼のアトリエのエッセンスや、インスピレーションを与え続けてそれ自体が作品と言い得る空間全体の味わいに迫り、ノグチ芸術の精髄を体感することができるだろう。

>>「イサム・ノグチ 発見の道」レポートはこちら

第3章「石の庭」の展示風景より、手前はイサム・ノグチ《ねじれた柱》(1982-84) イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵(公益財団法人イサム・ノグチ日本財団に永久貸与)
(C) 2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/JASPAR, Tokyo E3713

「ざわつく日本美術」(サントリー美術館、8月29日まで)

 美術作品を鑑賞するときに感じる「心のざわめき」に着目した展覧会が、サントリー美術館で開催中の「ざわつく日本美術」だ。

展示風景より、《尾上菊五郎》(1875頃)

 本展は、サントリー美術館開館60周年を記念した展覧会の第2弾。学芸員だけでなく教育普及とともにつくりあげられ、コレクションから選定した90件以上(展示替えあり)を「うらうらする」「ちょきちょきする」「じろじろする」「ばらばらする」「はこはこする」「ざわざわする」といったキーワードから紹介する。

 例えば「うらうらする」では、重要文化財《色絵五艘船文独楽型鉢》といった作品の裏側を見せる工夫がなされ、「ちょきちょきする」では重要文化財《佐竹本・三十六歌仙絵巻 源順》など、切断によって制作当初の姿から改変された作品を展示。それぞれのディティールや背景を心ゆくまで楽しみたい。

>>「ざわつく日本美術」レポートはこちら

展示風景より、重要文化財《佐竹本・三十六歌仙絵巻 源順》(鎌倉時代)

「野口哲哉展-THIS IS NOT A SAMURAI」(群馬県立館林美術館、9月5日まで)

 鎧と人間をテーマに彫刻や絵画の制作を行い、多様な文化や感情が混ざり合った作品を通じて、現代社会の構造や、人類の歴史において普遍的に受け継がれてきたものを問いかけてきたアーティスト・野口哲哉の大規模個展が、館林美術館に巡回中だ。

展示風景より、野口哲哉《Red Man》(2008)

 展覧会全体を通して貫かれている大きなテーマは、野口の「人間」に対するまなざし。彫刻や絵画のモチーフとなっているのは一見我々とは遠い存在に思える鎧兜をまとった男たちだが、それらはいずれも現代の人間と同じ心の機微を感じさせるものとなっている。

 会場は5つの章により構成。現代の社会の構造を武士たちの姿を借りて映し出すような作品や、ヨーロッパの古典技法で描き出された鎧姿の人物たちなど、多様な表現に注目したい。

>>「野口哲哉展-THIS IS NOT A SAMURAI」レポートはこちら

展示風景より、中央が野口哲哉《Think Of Operation -工学の鎧-》(2011)