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あいトリ補助金「交付」にアーティストたちの反応は? 「萎縮せず議論の場をつくり続ける」

文化庁が「あいちトリエンナーレ2019」への補助金について、不交付から一転し交付を決めた。この件について、不交付撤回を求めてきたアーティストたちはどのような思いを抱いているのか?

補助金不交付の撤回を求める署名簿 撮影=若林直子

 「あいちトリエンナーレ2019」に交付される予定だった補助金約7800万円が昨年9月下旬に「不交付」となり、約半年が過ぎたタイミングで一転「交付」となった。この間、不交付撤回を求める署名活動を行い、10万筆もの署名を集めたのが、同トリエンナーレ参加作家たちだ。彼らは、今回の「減額して交付」の決定についてどのような思いを抱くのか?

 「表現の不自由展・その後」を含む一連の展示の再開を求めて動いた「ReFreedom_Aichi」で中心的な役割を果たした3人のアーティスト、小泉明郎、卯城竜太(Chim↑Pom)、高山明のコメントを紹介する。

小泉明郎 文化庁と愛知県の間でどのような議論がなされ、どのようなプロセスを経て、このような判断が下されたかわかりませんが、ReFreedom_Aichiとしては、見えない多くの人々の抗議の声を集め、ひとつの大きな意志へと集約させ可視化できたことは、少なからずこの結果に影響があったのではと願っています。またこの文化庁による不交付決定を機に、より多くの関係者及び他ジャンルの人々とのネットワークがつくられたことは大きな収穫だと思っています。ひろしまトリエンナーレ2020の件など、まだまだ問題は山積みですが、引き続き皆で知恵を出し合い、問題に対しては抗議の声を上げ続けていこうと思っています。
卯城竜太(Chim↑Pom) 正直驚きました。望みが薄いなかでReFreedom_Aichiは署名を始めたと思っていたので、まあびっくりです。減額の説明やプロセスの不明瞭さなど、まだまだ問題は山積みですが、何しろ愛知県の交渉が受け入れられたというのは、文化庁にはやっぱり裁判の勝ち目がなかったんですね。不交付って決定は、それほど法的根拠がない、訳わかんない措置だった。そこまであり得ない話だったから皆ムカついたし、最終的には文化庁も降りざるを得なかった。署名についての詳しくは、先日放送されて神回になったと噂の「空気・アンダーコントロール」@Dommuneをチェックしてもらえたらと思いますが、とにかく10万筆って膨大なんですね。 以前、辺野古基地反対でローラさんが降臨した署名あったじゃないですか。あれ、30日間で10万筆を超える署名には、ホワイトハウスはレスポンスしますよって約束の下で行われたやつらしいです。つまり、最低でもホワイトハウスが持つくらいの誠意を、文化庁も持ってよってレベルの量なんですね。だから、これまでまったく誠意も無く、未だに減額やプロセスがブラックボックスなままの文化庁には、とにかくこの署名を「永久保存版」として受け取ってほしい。これで終わりとしないでほしい。はっきり言って歴史的な汚点なので、それをご自身で猛省し、反芻なさるためにも、是非とも目立つところに保存してもらいたいですね。  最後に。色々偉そうに言いましたが、Chim↑Pomはこれまで公金と距離を保って活動してきました。これからもそうかもしれません。ウンザリですから。それでもこの運動に僕が関わったのは、これを藤井光さんの言葉を借りれば「公の運営」の問題だと考えたからなんです。自分の公金へのスタンスとは別問題。不自由展への批判的な自分の意見とも別問題。公は、政府によってのみ運営されるのか。僕ら一人ひとりの個によって運営されるのか。検閲の火の粉が振りかかった以上、その大前提への拘りが必要でした。公について考えるときに僕が重んじるのは、「個の力」と「個の自由」だけです。もしも文化庁がこの一件を忘れようとしても、僕は忘れるつもりはありません。
高山明 驚きました。率直にうれしかったです。しかし、疑問も残りました。一度不交付となった決定が覆るまでには、文化庁と大村知事との間で様々なやり取りがあったと想像します。そうした裏での「プロフェッショナルな解決」によって、不交付が決定された経緯や減額になった背景が可視化されずに「一件落着」してしまいました。10万筆の反対署名は未だに然るべきかたちで受け止めてもらっていません。今回の結果は、たまたま知事が優秀で、文化庁に“まだ”それに応えるだけの力があったからに過ぎない印象です。曖昧で不可視な部分が大きいため、逆に、その部分に見えない検閲や抑圧が入り込む余地が残った、いや、ひょっとすると拡大してしまった面があるのではないかと危惧します。そこを隠蔽せず、決定のプロセスを可視化し、記録していくことが重要ではないでしょうか。そして今後のために、新しいルールを文書化して公のものにしてほしい。そうすることで、表現の自由に政治が介入する余地をなくしていき、また、文化庁の独立性も守っていく。今回「一件落着」したことで、かえって見えないままになる部分が残ってしまいました。私たち表現者は、萎縮したり自己検閲したり自粛したりすることなく、今後もこれまで以上に声をあげ、問い直し、対話や議論の場をつくり続けていかねばと思います。

編集部

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