INSIGHT - 2018.2.1

芸術祭まとめ!
2017年の回顧→2018年の予定

2018年も「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」をはじめ、日本全国で多くの芸術祭が開催される予定だ。そこで、2017年の芸術祭・国際展を概要とともに振り返り、その傾向を考えるとともに、2018年のラインナップを紹介する。

文=小林沙友里

Reborn-Art FestivalのSIDE CORE「RODE WORK」の中で展示されたEVERYDAY HOLIDAY SQUADの《rode work》

Reborn-Art FestivalのSIDE CORE「RODE WORK」の中で展示されたEVERYDAY HOLIDAY SQUADの《rode work》

|2017年の芸術祭・国際展

 まずは2017年に開催された芸術祭・国際展の中から、12件を会期が早い順に紹介。筆者の独断と偏見によるベスト5はタイトル横に番号を記した。

いちはらアート×ミックス2017

会期:4月8日〜5月14日

会場:千葉県市原市南部地域、IAAES(旧里見小学校)、月出工舎(旧月出小学校)、内田未来楽校(旧内田小学校)、市原湖畔美術館など

主催:いちはらアート×ミックス実行委員会[会長:小出譲治(市原市長)]

実施回数:2回目

参加アーティスト:木村崇人、開発好明、クワクボリョウタ、風景と食設計室 ホー、鈴木ヒラクなど31組

古民家を利用したアートハウスあそうばらの⾕にて、反射板などを使った鈴⽊ヒラクのインスタレーション《道路》

 千葉県のほぼ中央に位置し、小湊鉄道の里山トロッコ列車が走る地域で2014年にスタート。「中房総国際芸術祭」とうたった前回より規模が縮小されたが、来場者数は前回の約8万000千人を上回る約10万人となった。

 ⽊村崇⼈が⽉崎駅前の小屋を緑で覆った「森ラジオステーション」を拠点に行った森と戯れるワークショップ、開発好明が旧里見小学校でプロデュースした「⾥⾒100⼈教頭学校キョンキョン」の講座など、参加型プロジェクトが目立つかたちとなったこともその要因だろう。

 アート鑑賞を目的に訪れた人にとっては、連動企画として市原湖畔美術館で開催された「カールステン・ニコライ:Parallax パララックス」(3月18日〜5月14日)の存在は大きかったと思われる。

⽊村崇⼈「森ラジオステーション×森遊会」

北アルプス国際芸術祭2017~信濃大町 食とアートの廻廊~ ※筆者ベスト5

会期:6月4日~7月30日

会場:長野県大町市全域

実行委員長:牛越徹(大町市長)

総合ディレクター:北川フラム

実施回数:1回目

参加アーティスト:栗林隆、栗山斉、新津保建秀+池上高志、目、川俣正、大岩オスカール、大平由香理、フェリーチェ・ヴァリーニ、ジェームズ・タップスコットなど36組

栗林隆《だいいち黒部ダム》。裏から入ると至るダムの上部。表から入ると大町の多様な土を重ねて層にしたダムの下部を見ることができた

 北アルプス山脈の麓に位置し、古くから塩の道千国街道の宿場町として栄えた長野県大町市が舞台。『信濃大町2014〜食とアートの廻廊〜』の作品の一部を生かしてタイトルを変え、本格開催となった。

 圧巻だったのは、栗林隆が商店街の空き店舗に出現させた《だいいち黒部ダム》。約1/40スケールで黒部ダムを再現し、ダム湖の部分は足湯として観客が浸かれるようにした。信濃大町の象徴である黒部ダムを生活に身近な場につくることによって、町の誇り、エネルギー問題を扱いながら軽やかに解きほぐすような開かれた時空をつくりあげた。

 食に関しては、地元の飲食店と協力し、芸術祭限定メニューや「自慢の一品」の提供、特製の「おもてなし小皿」をするなどの取り組みを行った。

目《信濃大町実景舎》。妙な形状の空間に足をとられながらふと見遣ると、北アルプスの風景が新鮮に映る。積雪のころはどう見えるだろうか

Reborn-Art Festival 2017 ※筆者ベスト1

会期:7月22日~9月10日

会場:宮城県石巻市(牡鹿半島、市内中心部) 提携会場:松島湾(塩竈市、東松島市、松島町)、女川町

主催:Reborn-Art Festival実行委員会 / 一般社団法人APバンク

実行委員長:亀山紘(石巻市長)、小林武史(一般社団法人APバンク 代表理事)

実施回数:1回目

参加アーティスト:目、カオス*ラウンジ、Chim↑Pom、キュンチョメ、SIDE CORE、島袋道浩、増田拓史、青木陵子+伊藤存、パルコキノシタ、コンタクトゴンゾ、さわひらき、宮永愛子、齋藤陽道、鈴木康広、金氏徹平、名和晃平、宮島達男、JR、カールステン・ニコライ、ルドルフ・シュタイナーほか38組

目の《repetition window》。ガラス張りの縁側を設えた車は、市街地の家の庭らしきところから牡鹿半島の荻浜小学校までの道中、三陸復興国立公園建設地の脇、防潮林と防潮堤の間などを通過した

 東日本大震災後、復興をテーマに活動してきたAPバンクが主体となり、アート・音楽・食による、東北における新しい祭として行った。企画構成や参加アーティストの選定はワタリウム美術館の和多利浩一/恵津子、思想家・人類学者の中沢新一、小林武史がクリエイティブディレクションユニットを組織。

 急速な変化を遂げる石巻の景色を移動式の縁側から見せた「目」の《repetition window》をはじめ、廃業したばかりの映画館・日活パールシネマに別の劇場をつくりあげたカオス*ラウンジの《地球をしばらく止めてくれ、ぼくはゆっくり映画をみたい。》、「楽しいときに涙を流したい」という遺族らの涙を集めて冷凍コンテナで保管したChim↑Pomの《ひとかけら》、震災後の年月を地中で過ごした蝉の生まれ変わりを見届けるキュンチョメの《空蝉》、利用停止とされたスケートパークでストリートカルチャーが生に与える可能性を提示したSIDE COREのインスタレーション、浜辺で倒れた木や石を起こすことで心に変化を起こす島袋道浩の《起こす》、海を望む景色の見え方の変化を扱った増田拓史の《みれなかったものがみえたとき》など強度の高い作品が多数展開された。

 そのほか、中沢新一が宮沢賢治の諸作をモチーフに脚本を書き下ろし、小林武史が歌劇に仕立てたオペラ『四次元の賢治 -第1幕-』が上演されたほか、会期中さまざまな場所で音楽イベントを行う「51日間、毎日どこかで音楽が鳴っているプログラム」や、「Reborn-Art Festival 2017 × ap bank fes」(国営みちのく杜の湖畔公園)も開催された。地元の主婦らによる食堂「はまさいさい」は芸術祭終了後も営業を継続している(冬季休業あり)。

カオス*ラウンジの《地球をしばらく止めてくれ、ぼくはゆっくり映画をみたい。》では浸水高2.5mまで客席を上げ、亡霊たちに来迎図を見せた。水面下の一角には浸水時の劇場を思わせるVR作品も

ヨコハマトリエンナーレ2017

会期:8月4日~11月5日

会場:横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館

主催:横浜市、(公財)横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会

ディレクター:逢坂恵理子(横浜美術館館長)、三木あき子(キュレーター)、柏木智雄(横浜美術館副館長)

実施回数:6回目

参加アーティスト:ワエル・シャウキー、小沢剛、宇治野宗輝、川久保ジョイ、ザオ・ザオ、アイ・ウェイウェイ、オラファー・エリアソン、マウリツィオ・カテラン、青山悟、柳幸典、畠山直哉、風間サチコ、瀬尾夏美、ミスターほか38組

田村友一郎《γ座》は横浜の複数箇所にまつわる物語をモールス信号を交えて表現した

 スプツニ子!、リクリット・ティラバーニャ、鷲田清一、養老孟司らを構想会議メンバーとして迎え、「島と星座とガラパゴス」をテーマに開催。

 十字軍の物語をアラブ側の視点から描いたワエル・シャウキー《十字軍芝居》、横浜出身で日本近代美術の礎を築いた岡倉天心を扱った小沢剛《帰って来たK.T.O.》など優れた作品が多くありつつも、全体としてはテーマ性や祝祭性が見えづらく、それぞれの作家の展示がおとなしく並置されているような印象を受けた。

 いっぽう、多数の関連プロジェクトのうち、山下公園の日本郵船氷川丸で田村友一郎が展開した《γ座》、寿町で水族館劇場が繰り広げた「盗賊たちのるなぱあく」、高山明/Port Bや毒山凡太朗が参加した「黄金町バザール2017 –Double Façade 他者と出会うための複数の方法」、BankART Studio NYKで行われたグループ展「BankART Life V -観光」が強いインパクトを残した。

高山明/Port B「遠くを近くに、近くを遠くに、感じるための幾つかのレッスン」。ドイツにいる難民による授業を横浜の人たちで翻訳・朗読したものを船上で聴くことで、黄金町に渡ってきた多くの外光人にも意識が及んだ

種子島宇宙芸術祭

会期:8月5日〜11月12日

会場:鹿児島県種子島全島(西之表市・中種子町・南種子町)

主催:種子島宇宙芸術祭実行委員会

後援:宇宙航空研究開発機構(JAXA)、YAC(財)日本宇宙少年団、鹿児島県、南種子町教育委員会、中種子町教育委員会、西之表市教育委員会

総合ディレクター:森脇裕之

実施回数:1回目

参加アーティスト:椿昇、千田泰広、木村崇人、佐竹宏樹、開発好明、中村哲也、ミラーボーラー、小阪淳ほか11組

椿昇「KASABUTAプロジェクト」の様子。「KASABUTA」というネーミングは、地球を汚染し傷つけている人類を、地球の怪我が治ったら剥がれ散ってしまうかもしれない瘡蓋に見立てたもの。ピンクの巨大なオブジェは、増殖し続ける人類のポートレート《mammalian》 ©︎Tsubaki Noboru

 古代遺跡が残り、鉄砲が伝来し、JAXAの種子島宇宙センターからロケットが打ち上がる鹿児島県種子島で、「宇宙芸術」を追究してきたメディアアーティスト・森脇裕之が主導し、「自然と科学と芸術の融合」をテーマに本格始動。

 椿昇が特製キャンピングカー「KASABUTA」と共に島を放浪し、島の人々と関わる「KASABUTAプロジェクト」、木村崇人が自然、文化、伝統などの資源や、獣害、高齢化、過疎化などの課題を具材として地域の「調理」を試みた「地球と遊ぶレストラン」、千田泰広が工場跡地の暗闇に星空のような空間をつくり出した《Myrkviðr》など、宇宙をさまざまな角度からとらえた地域性の色濃い作品・プロジェクトが展開された。

千田泰広《Myrkviðr》。タイトルは「深い森」という意味。釣り糸を張り巡らせ無数の光の粒を浮かび上がらせた

札幌国際芸術祭2017

会期:8月6日~10月1日

会場:札幌芸術の森、モエレ沼公園、まちなかエリア、札幌資料館、札幌大通地下ギャラリー 500m美術館など

主催:札幌国際芸術祭実行委員会/札幌市

ゲストディレクター:大友良英

実施回数:2回目

参加アーティスト:∈Y∋、梅田哲也、さわひらき、毛利悠子、中崎透、堀尾寛太、石川直樹、クワクボリョウタ、岸野雄一、宇川直宏、テニスコーツ、大友良英+青山泰知+伊藤隆之、クリスチャン・マークレーなど77組

毛利悠子《そよぎ またはエコー》。廊下の端と端に置かれたピアノの自動演奏のズレが、古い街路灯、窓の外の森、小さな鈴の音、彫刻家・砂澤ビッキの詩の朗読などを目や耳にしながら順路を進むうちに気にならなくなる

 音楽家の大友良英がゲストディレクターとして旗を振り、「芸術祭ってなんだ?」という問いかけをテーマに、「ガラクタの星座たち」なる仮の回答をサブテーマに開催。「音楽と美術のあいだ」にいるようなアーティストらを集め、「芸術と生活のあいだ」にあるような作品を多く点在させた。

 なかでも強い印象を残したのは、毛利悠子が札幌市立大学 芸術の森キャンパスの空中廊下「スカイウェイ」にインストールした《そよぎ またはエコー》、梅田哲也が市内のデパート跡の1フロアに札幌各地で集めた廃材や日用品、ファウンドオブジェクトを使って構成した《わからないものたち》、∈Y∋が「NEW LIFE:リプレイのない展覧会」の一部として点描でつくり出した驚異的な祈りの空間《ドッカイドー/・海・》。いずれも自然と近代化の痕跡が混じり合うこの地特有の感覚や心のありようなど、見聞きしづらいものに意識を向かわせた。

 道内の木彫り熊を集めた展示や、私設博物館「レトロスペース坂会館」のコレクション、「大漁居酒屋てっちゃん」の店主による内装など、普段はアートとして扱われないようなものを俎上にあげたのも特徴の一つとなった。

梅田哲也《わからないものたち》。ガラクタの集積のような空間で刹那の美しい景観を見せた

奥能登国際芸術祭2017 ※筆者ベスト2

会期:9月3日~10月22日

会場:石川県珠洲市全域

総合ディレクター:北川フラム

実施回数:1回目

参加アーティスト:Ongoing Collective、岩崎貴宏、さわひらき、石川直樹、鴻池朋子、塩田千春、トビアス・レーベルガー、ひびのこずえ、EAT&ART TAROほか39組

和田昌宏 さまよう魂、漂う風景 2017

 舞台は能登半島の北端に位置する石川県珠洲市。日本海における海上交易の要地だったこの地には日本文化の要素が集積し、過疎化が進んだいまもそれが色濃く残り、その象徴のひとつである秋祭りに時期を合わせての開催となった。

 筆者がとくに興味をひかれたのは、Ongoing Collectiveが旧保育所の建物で展開した「奥能登口伝資料館」。原発誘致をめぐる市民同士の衝突や、自然のなかにつくられた近代的な人工物にまつわる話に触発され、海・陸からの漂流物の出会いの物語を映像作品にした和田昌宏の《さまよう魂、漂う風景》、珠洲で漁業実習生として働くインドネシアの暮らしを表した柴田祐輔の《PANDAWA HOUSE SATELLITE》など、気鋭の作家10人がそれぞれ珠洲の人々に聞いた話から、奥能登のさまざまな姿を浮かび上がらせた。


石川直樹《混浴宇宙宝湯》。芝居小屋、遊郭、温泉旅館などさまざまな用途で使用され、増改築を重ねてきた木造建築「宝湯」全体を使って展示。石川が珠洲の各地で撮影した写真やファウンドフォトなどが組み合わせられ、奥能登の知られざる歴史が掘り起こされた

六甲ミーツ・アート 芸術散歩2017

会期:9月9日~11月23日

会場:六甲ガーデンテラス、六甲山カンツリーハウスほか兵庫県六甲山の10カ所

主催:六甲山観光株式会社、阪神電気鉄道株式会社

総合ディレクター/キュレーター:高見澤清隆(六甲オルゴールミュージアム シニアディレクター)

実施回数:8回目

参加アーティスト:古屋崇久、藤浩志、豊福亮、髙橋匡太、開発好明、川島小鳥、淀川テクニックほか39組

古屋崇久 こんにちは ©︎Furuya Takahisa

 観光会社と鉄道会社が主催する毎年恒例の催し。緑豊かな六甲山で、ピクニック気分でアート作品を楽しむことができる。

 特筆すべき作品は古屋崇久《こんにちは》。双眼鏡のある場所から約350メートル離れた白い小屋で、時折作家がひらがな、数字、記号などの文字が書かれた布を掲げて言葉を発信するのだが、双眼鏡で覗き見ることができる文字は限られているため、それらは都合よく理解され、誤解され続ける。SNS上のコミュニケーションを対極的な自然のなかでアナログに表現することで、その異様さを浮き彫りにした。

ドラえもんなどのおもちゃを複数組み合わせ花のように浮かべた藤浩志《六甲の不思議の森の物語》

西野逹 In Beppu ※筆者ベスト3

会期:10月28日~12月24日

会場:大分県別府市

主催:別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会(後援:別府市、大分県ほか)

総合プロデューサー:山出淳也

実施回数:2回目(In Beppuとして)

油屋熊八像を囲った《油屋ホテル》のメインルーム

 個展形式の芸術祭「in BEPPU」第2弾。昨年の「目」による市役所を使ったインスタレーションに続く今回は西野逹が、別府駅前にある別府観光の父・油屋熊八の銅像と手湯を囲み、《油屋ホテル》として地域の歴史を視覚化するなど計5プロジェクト8作品を展開した。

 《油屋ホテル》では手湯を改装した天然温泉の露天風呂、閉館した老舗の宿から移設したベッドルームなどが調えられ、抽選で当選した1組2名が一晩滞在し、駅前に集う人々の声や駅の電車のアナウンスを聞きながら入浴することができた。多様な人を受け入れ、共同湯までの路地を半裸の男性がゆくようなパブリックとプライベートの境界の曖昧さが魅力であった別府に、はっきりした境界をもつ作品を持ち込むことで、そうした美点を強調するとともに、それらが失われつつあることへの警鐘を鳴らしているようにもとれた。

別府タワーに顔を描き、よだれかけをつけて地蔵にした《別府タワー地蔵》

やんばるアートフェスティバル2017-2018〜ヤンバルニハコブネ〜

会期:12月9日〜2018年1月21日

会場:沖縄本島北部地域

主催:やんばるアートフェスティバル実行委員会(共催:大宜味村、島ぜんぶでおーきな祭 後援:沖縄県、国頭村、東村、本部町、名護市ほか)

総合ディレクター:仲程長治(写真家)

実施回数:1回目

参加アーティスト:キュンチョメ、照屋勇賢、椿昇、淀川テクニック、西野亮廣、藤代冥砂、高木正勝、紫舟ほか50組(エキシビション部門29組、クラフト部門21組)

キュンチョメ 完璧なドーナツをつくる(仮)

 国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がる自然豊かな山原(やんばる)地域で初開催。「沖縄国際映画祭」を開催してきたよしもとエンタテインメント沖縄が主導し、「芸術と創造」代表理事・金島隆弘、「山本現代」ディレクター・山本裕子、『芸術新潮』編集長・吉田晃子らがアドバイザーとして参加、やきもの、芭蕉布、木工など地元の工芸品の展示をスタイリスト・熊谷隆志がディレクションした。

 白眉はメイン会場の旧塩屋小学校で映像インスタレーションを展示したキュンチョメ《完璧なドーナツをつくる(仮)》。環状のアメリカドーナツを沖縄の人がつくり、球状の沖縄ドーナツ(サーターアンダーギー)を米軍の人がつくり、米軍基地のフェンス越しに合体させて完璧なドーナツをつくるというアイデアをもとに、Aサイン(本土復帰前の沖縄で米軍公認の飲食店・風俗店に与えられた営業許可証)バーのママ、牧師、戦争史料を扱う私設博物館の館長、米軍基地反対運動参加者などさまざまな立場の人々に、その賛否を問うていく。二つのドーナツを手渡された彼らはその滑稽さについ本音を漏らしたり醸したりしてしまう。そしていつの間にか観客の心理までもが揺さぶられているのだった。

照屋勇賢《La mer》。海を歌った名曲をモチーフにした、母国語の異なる人々による、海底の生き物たちのパペットシアター。オスプレイ配備への反対運動を報じた新聞紙に多言語でタイトルの言葉を刻んだ《It's about you, it's about me》と向かい合わせに展示された

カオス*ラウンジ新芸術祭2017 市街劇「百五〇年の孤独」 ※筆者ベスト4

会期:12月28日~2018年1月28日

会場:福島県いわき市泉町

キュレーション、演出:黒瀬陽平

実施回数:3回目

参加アーティスト:梅沢和木、Houxo Que、藤城嘘、SIDE CORE、パルコキノシタ、三毛あんり、市川ヂュン、井戸博章、KOURYOU、梅田裕、酒井貴史ほか20組

密嚴堂には浄土、現世、地獄が表現された。写真中央は男性が所有していた大日如来の白描画で本尊としたもの、その他右から時計回りにSIDE CORE、パルコキノシタ(木彫りの仏像)、同(襖絵)、三毛あんりの作品

 福島県いわき市の市街地で2015年、2016年と開催してきた市街劇「カオス*ラウンジ新芸術祭」が、同市内の泉町に舞台を移して開催。廃仏毀釈からの「復興の失敗」を経験した町を、地図と手紙をたよりに巡りながら鑑賞する。

 仏教がほぼなくなり、死者と関わる方法を失った町には、戒名のない真新しい墓が並ぶ墓地、コンクリートの囲いの中に整然と置かれたさまざまなかたちの無縁墓らしきもの(一部は東日本大震災時に落下している)など、違和感を覚える風景があり、東日本大震災の被災地で工事が進められている復興住宅や防潮堤を彷彿させた。

 そんな場で彼らが行った最たることは、新しい寺「密嚴堂」をつくること。ちょうど泉町で寺をつくろうと僧侶になる修行を行っていた男性に出会い、その美術を手がけることになり、男性が所有していた古民家に作品を展開した。必然的な偶然をも引き寄せ、強力なドラマツルギーで観客を引き込む濃密な劇となった。

生蓮寺跡玉露観世音堂(子安観音)では、無縁のものとしてのHouxo Queの壊れたディスプレイ、井戸博章の大日如来像が展示されたほか、市川ヂュンのアルミ空缶製梵鐘で除夜の鐘がつかれた

|2017年の傾向

 アーティストがリードする芸術祭は今に始まったことではないが、2017年はとくに多かったといえるだろう。札幌国際芸術祭は前回の坂本龍一に続き、音楽家の大友良英がゲストディレクターを務め、Reborn-Art Festivalでは音楽家の小林武史が主導。種子島宇宙芸術祭はメディア・アーティストの森脇裕之が総合ディレクターとして地域に働きかけて実現した。アーティストであるがゆえに、地域に眠る素材を見つけ出し、既存の枠を超える発想で新たな意味を与え、本質的に新しい世界観を描き出すことができやすいのかもしれない。

 自治体が主体ではないところで自由度が比較的高い作品が実現していたことも、見応えにつながっていた。Reborn-Art Festival、やんばるアートフェスティバルなど、公金が入っていないわけではないが、資金面だけでなく人的リソース面でもその違いは現れてくると思われる。なお、カオス*ラウンジ新芸術祭本体は毎回助成を受けずに行っている。

 食に力を入れた芸術祭としては、北アルプス国際芸術祭、奥能登国際芸術祭、Reborn-Art Festivalが挙げられる。いずれも周辺の飲食施設と連携するだけでなく、表現のひとつとして食を扱い、それによって間口を広げていたことも芸術祭自体の特徴となっている。

 テーマに「星座」と掲げていた札幌国際芸術祭とヨコハマトリエンナーレは、いずれも良作が多数存在しながら、全体としては比較的弱まっていた印象がある。観客の能動的な姿勢がなければ充実した鑑賞体験になりづらいかもしれない。

|2018年の予定

 今年開催予定の芸術祭のうち、主なものを会期が早い順にリストアップする。

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018

会期:7月29日~9月17日

会場:越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)

実施回数:7回目

総合ディレクター:北川フラム

参加アーティスト(新作出品予定):レアンドロ・エルリッヒ、サンティアゴ・シエラ、クリスチャン・ボルタンスキー、島袋道浩、イ・ブル、シルパ・グプタほか

水と土の芸術祭2018

会期:7月14日~10月8日

会場:新潟市内全域

実施回数:4回目

総合ディレクター:谷新(美術評論家)

参加アーティスト:青木野枝、浅葉克己、岩崎貴宏、塩田千春、冨井大裕、日比野克彦、友政麻理子、林泰彦(パラモデル)ほか

みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018

会期:9月頃(未定)

会場:未定

実施回数:3回目

芸術監督:荒井良二(絵本作家)

プログラムディレクター:宮本武典

参加アーティスト:未定

福島現代美術ビエンナーレ

会期:9月9日〜11月23日(一部は10月15日〜)

会場:二本松市、南相馬市

実施回数:8回目

ディレクター:渡辺晃一(福島大学)

参加アーティスト:ヤノベケンジ、オノ・ヨーコ、福井利佐ほか

するがのくにの芸術祭 富士の山ビエンナーレ

会期:2018年10月27日~11月25日

会場:富士市、富士宮市、静岡市

実施回数:3回目

ディレクター:小澤慶介

参加アーティスト:飯田竜太、入江早耶、北川貴好、西原尚、maaadM、原倫太郎ほか

BIWAKOビエンナーレ 

会期:9月15日~11月11日(火曜定休)

会場:滋賀県近江八幡市旧市街 

実施回数:8回目

ディレクター:中田洋子

参加アーティスト:榎忠、伊島薫、市川平、ステファン・ラーソン、ローレント・フォート、エメリック・シャンティエほか

六甲ミーツ・アート 芸術散歩

会期:9月8日〜11月25日

会場:六甲ガーデンテラス、六甲山カンツリーハウスほか兵庫県六甲山

実施回数:9回目

総合ディレクター/キュレーター:高見澤清隆(六甲オルゴールミュージアム シニアディレクター)

参加アーティスト:4月発表予定

糸島国際芸術祭

会期:2018年10月20日、21日、27日、28日

会場:福岡県糸島市二丈松末地区、一貴山地区、深江地区

実施回数:4回目

実行委員長:松崎宏史(美術家)

アドバイザー:藤浩志(美術家)

参加アーティスト:小金沢健人、Studio Kura、大澤寅雄、河合拓始、手塚夏子、牧園憲二ほか

in Beppu

会期:10月6日〜11月25日

会場:別府市内各所

実施回数:3回目

総合プロデューサー:山出淳也

参加アーティスト:5月中旬発表予定