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ジャコメッティからリンチまで。
2018年注目のアートムービー5本

伝説のアーティストから現代を生きる注目のクリエイターまで、アートにまつわる多彩な人物、テーマにフォーカスするアートムービー。現在公開中の映画も含め、2018年注目のアートムービー5本を紹介する。

映画『ジャコメッティ 最後の肖像』より © Final Portrait Commissioning Limited 2016

|ジャコメッティをひもとく知的コメディ 『ジャコメッティ 最後の肖像』

映画『ジャコメッティ 最後の肖像』より © Final Portrait Commissioning Limited 2016

  「見えるものをそのままに」を信条に、妥協のない作品づくりに取り組んだ20世紀ヨーロッパにおける重要な彫刻家のひとり、アルベルト・ジャコメッティの伝記映画『ジャコメッティ 最後の肖像』が全国で順次公開中だ。

 作家、美術評論家ジェイムズ・ロードによる回顧録『ジャコメッティの肖像』をベースとした本作は、ジャコメッティがロードの肖像画に取り組む18日間の日々を描写。愛人の突撃訪問やスランプなどの紆余曲折でなかなか完成しない肖像画と、ジャコメッティを取り巻く複雑な人間関係がテンポよく、ときにユーモラスに描かれ、ジャコメッティの素顔がしだいに浮き彫りになっていく。

|映画『ジャコメッティ 最後の肖像』

公開:1月5日よりTOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開

監督・脚本:スタンリー・トゥッチ

出演:ジェフリー・ラッシュ、アーミー・ハマー、クレマンス・ポエジー、トニー・シャルーブ、シルヴィー・テステュー

配給:キノフィルムズ

上映時間:90分

|孤高のデザイナーの等身大の姿 『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』

映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』より © 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR – ARTE

 25年間にわたって世界のセレブリティやファッショニスタたちを魅了し続けてきたファッション・デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン。これまで密着取材を断り続けてきたというドリスの初のドキュメンタリーとなる本作『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』では、ショーの裏側からアトリエ、インドの刺繍工房まで、創作の裏側と全貌が明らかになる。

 ファッション勢力図を刷新した企業買収の嵐や、共同経営者の死など、ドリスが乗り越えてきた厳しい局面も描かれるいっぽうで、パートナーと暮らすアントワープ郊外の緑豊かな邸宅も登場。季節ごとに表情を変える広大な庭園をドリス自らが案内し、家庭菜園で採れたばかりの野菜で調理をするシーンなど、孤高のデザイナーの知られざる一面も垣間見ることができる。

|映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』

公開:2018年1月13日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー

監督:ライナー・ホルツェマー

音楽:コリン・グリーンウッド(レディオヘッド)

出演:ドリス・ヴァン・ノッテン、アイリス・アプフェル、スージー・メンケス

配給:アルバトロス・フィルム

上映時間:93分

|名作の裏にある愛と苦悩 『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』

映画『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』より © MOVE MOVIE -  STUDIOCANAL  - NJJ ENTERTAINMENT

 今年、生誕170周年を迎えるポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャン。ゴーギャンの代名詞といえば、タヒチの女性たちがモデルとなったエキゾチシズム溢れる絵画だが、そんなタヒチ時代の愛と苦悩の日々、創作の秘密を、史実とフィクションを織り交ぜ描くのが『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』だ。

 タヒチを去った後に、ゴーギャンが自ら執筆した紀行エッセイ『ノア・ノア』を下地とした本作。1891年、パリからタヒチへ渡ったゴーギャンが、孤独や病を乗り越え、ミューズであり妻となった女性・テフラや、現地に伝わる独特の宇宙観との出会いをきっかけに、次々と名作を生み出していく様子が描写される。ゴーギャンによる有名絵画のモチーフが登場するシーンにも注目したい。

|映画『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』

公開:2018年1月27日よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマカリテほか全国順次ロードショー

監督:エドゥアルド・デルック

出演:ヴァンサン・カッセルほか

配給:プレシディオ

上映時間:102分

|リンチが紡ぐ「悪夢」はどこから生まれる? 『デヴィッド・リンチ:アートライフ』

映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』より © Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

 伝説のテレビシリーズ『ツイン・ピークス』や、熱狂的かつカルト的な人気を誇る映画作品『エレファント・マン』『マルホランド・ドライブ』などの監督として知られるデヴィッド・リンチ。映像作品のみならず、絵画、写真、音楽なども手がける鬼才・リンチが、本作『デヴィッド・リンチ:アートライフ』で自分の人生を語りつくす。

 25時間におよぶ親密なインタビューを編集したこの作品では、幼少期、学生時代の退屈と憂鬱、親友との友情、生活のために働きながら助成金の知らせを待った日々、当時の妻の出産を経てつくられた長編デビュー作『イレイザーヘッド』に至るまでを回想。リンチの頭の中を覗き見るような濃密な88分間になっている。

|『デヴィッド・リンチ:アートライフ』

公開:2018年1月27日より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次ロードショー

監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルム

出演:デヴィッド・リンチ

配給・宣伝:アップリンク

上映時間:88分

|写真家、鋤田正義がとらえてきた「永遠」 『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』

© All the photos by SUKITA. All rights reserved © 2018「SUKITA」パートナーズ

 デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、マーク・ボラン、忌野清志郎、YMOなど、名だたるアーティストのポートレイト写真を手がけてきた写真家、鋤田(すきた)正義の軌跡をたどる初のドキュメンタリー『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』。今年5月に80歳を迎える鋤田のフィールドは広告、ファッション、音楽、映画まで多岐にわたり、世界各地で個展を開催するなど現在も精力的に活動を続けている。

 布袋寅泰、MIYAVI、ジム・ジャームッシュ、ポール・スミス、山本寛斎らが鋤田との仕事や思い出を語り、鋤田正義の人物像を解き明かしていく本作。そのいっぽうでは、鋤田自身が40年以上にもおよんだボウイとの関係性を回想し、赤い人民服に身を包んだメンバーの姿が印象的なYMO『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』のジャケット撮影秘話も本人たちとの語らいによって明かされるなど、アートファンのみならず音楽ファンも楽しめる1本だ。

|『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』

公開:2018年5月19日より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

監督:相原裕美

出演:鋤田正義、布袋寅泰、ジム・ジャームッシュ、山本寛斎、永瀬正敏、糸井重里、リリー・フランキーほか

配給:パラダイス・カフェ フィルムズ

上映時間:115分

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