EXHIBITIONS

Anish Kapoor: Selected works 2015-2022

SCAI PIRAMIDE
2022.05.07 - 07.09

アニッシュ・カプーア Eclipse 2018 Courtesy of SCAITHE BATHHOUSE

アニッシュ・カプーア Oriental Blue 2021 Courtesy of SCAITHE BATHHOUSE

 アニッシュ・カプーアの個展「Anish Kapoor: Selected works 2015-2022」がSCAI PIRAMIDEで開催される。

 カプーアは1954年インド・ムンバイ生まれ。70年代に渡英し、現在はロンドンを拠点に活動。英国を代表する彫刻家のひとりとして国際的に高い評価を得てきた。神話や哲学から派生する独特の世界観によってかたちづくられており、作品の存在する空間そのものを異空間へと変換してしまう、現実と非現実の両方を併せ持つかのような作品は、宇宙的な観念や、神秘性、官能性を強く感じさせる表現となっている。

 現在、ヴェネチアのアカデミア美術館およびパラッツォ・マンフリンの2会場で、英国人アーティストとしては初となるカプーアの大規模回顧展が開催されている。SCAI PIRAMIDEでの個展「Selected works 2015-2022」は、ヴェネチアで開催中の展覧会とあわせて、作家の新作を含む構成を展示し、カプーア作品の魅力とその芸術的実践の成果を改めて見通すものになるという。

 ギャラリーに入ると、まず鮮やかなブルーが印象的な円形の彫刻《Oriental Blue》(2021)が鑑賞者を迎え入れる。底に向かって浅く窪んだカーブを描く丸いステンレス製のオブジェは、カプーア独特の作品形式のひとつであり、2つの特殊な造形が向かい合わせになって飾られる。いっぽう新作の《Untitled》(2022)は、妊婦の腹のように膨らんで見える造形で、醸し出すユーモラスな雰囲気は、得体の知れないものが闇のなかから生まれる、どこか不穏な連想とも混じり合い、多層的な解釈を生み出す。

 別室は、カプーアがかねてより言及する「Void」空間の構成を示唆する展示室となる。天井のコーナーには黒く沈み込んでいる、あるいは浮かんでいるようにも見える「Void」をもたらす彫刻作品が設置され、また壁面の境目には、《Eclipse》(2018)と題された向かい合わせの2つの作品が展示される。

 制作初期の頃より一貫しているカプーアの「非物質的な物質」への関心は、1990年のヴェネチア・ビエンナーレで発表され、翌年ターナー賞を受賞した「Void」彫刻においてすでにひとつの到達点を示していたともいえる。そしてその取り組みは、空間へのより直接的な展開を伴って、今日、新たな地平を示している。本展は、色、光、知覚、空間といった要素を探求し続けるカプーアの現在地を見渡し、近年の成果を紹介する。