EXHIBITIONS

安野谷昌穂「Earth Song, Birth Gong」

2022.04.02 - 05.01

安野谷昌穂 2022

安野谷昌穂 House of Oracle Light 2020

安野谷昌穂 Astral Outputs 2022

 parcelで、安野谷昌穂の個展「Earth Song, Birth Gong」が開催。安野谷にとって2年ぶりの個展となる本展では、スケールある大小様々なペインティングを発表する。

 安野谷は1991年兵庫県生まれ。幼少期から現在に至るまで、自然のなかで多くの時間を過ごし、そのなかで得た観察や感覚に強く影響を受けながら、絵画、ドローイング、コラージュ、パフォーマンス、写真などを使った作品を手がけてきた。

 本展で発表される作品は、2020年頃から2022年に制作されているものが中心となる。パネルに描かれた作品では、土を耕し作物を育てるように、もしくは子供が枝で地面を掘り返して遊ぶように、パネルの上に石灰を盛り、削る、描く、重ねるという行為が何層にも繰り返されている。そのいっぽうで、キャンバス作品では、空気を内包し、音のような何かに色をつけるようにして、アクリル・油彩などが優しく何度も重ねられている。

 いずれの作品においても、身の周りに起こる出来事、環境を知覚することで安野谷に引き起こされた感覚が発端として描かれており、それらの感覚は言語的思考とは別の場所(安野谷の言葉では思考の裏側にある無意識の領域)から丁寧に呼び起こされ、最適なマテリアルや手法を手探りながら色が重ねられかたちづくられている。

 各シリーズの作品は極めて実験的に制作されているが、これは安野谷自身が語るように「常に初心者であること」を大切にしているためだという。プリミティブな線や形状、予期せぬ偶発的な色味や現象を作品に活かすため、あえて耐えず慣れない技法に手を出し、組み合わせながら独特な世界観を構成していく。それは安野谷が自分の周辺で知覚した時の感覚を、純度高く支持体にとどめておくための行為ともいえる。

 本展で展示される作品からは、地(地球、地面、地上)、生(エネルギー、死、命)のイメージが表出する。具象化することのない事象や、作家が感じた言葉のつかないイメージ、そして絵画の持つエネルギーを会場で体感してほしい。