EXHIBITIONS

マリオン・ペック「Paintings from Lotus Land」

2022.04.02 - 05.01

マリオン・ペック Girl with a Puppy 2021 © Marion Peck Courtesy of Nanzuka

 NANZUKA UNDERGROUNDで、ポートランド在住のアメリカ人アーティスト、マリオン・ペックの個展「Paintings from Lotus Land」が開催される。作家にとって日本での初個展となる。

 ペックは家族旅行中にフィリピンのマニラで生まれ、シアトルで育った。ロードアイランド・デザインスクールおよび、ニューヨーク州シラキュース大学とローマのテンプル大学で学び、1990年にワシントン州オリンピアのMarianne Partlow Galleryで初個展を開催。以後、サンフランシスコやニューヨーク、ローマ、パリなどで数多く発表している。

 ペックの油絵は、北方ルネサンス時代の宗教画の世界を彷彿とさせる緻密さで、私たち鑑賞者を不思議な物語へと誘う。そこには擬人化された動物、もしくは動物化した人間が登場する。多くの場合、登場する動植物の大きさは非現実的で、よく目を凝らして見ると、微かな表情の違和感や異物の組み合わせによって、私たちの好奇心をくすぐる様々な仕掛けが施されていることに気づかされる。

 ペックの描く極小ともいえるその絵画は、児童向け絵本のような親やすさと、迂闊に近づいてはいけない危険な香りとの絶妙なバランスによって生み出される魔法によって、私たち鑑賞者をその異世界に引き込むことに成功している。また、長年のパートナーであり、「ポップ・シュールレアリスム」をともに提唱する著名アーティスト、マーク・ライデンの存在は、ペックの作品を語る上で欠かせない。ライデンの影に隠れてきたいっぽうで、デビューが早かったペックがライデンに示唆を与えた可能性や、互いの作品性を高め合う影響関係についても考えられる。

 本展では、20数点の新作絵画およびドローイング作品を発表。ペックのフレッシュな作品が一堂に会し、夫ライデンの作品にはない、重要なポイントがあることに気がつくことだろう。

 ペックによる本展のタイトルにある「Lotus Land」は、古代ギリシャ神話における寓話に由来。日本の辞書では「桃源郷」とも訳される場合があるが、ホメロスの『オデュッセイア』に登場する「Lotus-eater」は、より複雑で教訓的なメッセージを象徴する存在として描かれている。