EXHIBITIONS

建部凌岱展

その生涯、酔たるか醒たるか

2022.03.12 - 04.17

建部凌岱 海錯図(左隻) 青森県立図書館蔵

建部凌岱 『建氏画苑』別冊 海錯図」 個人蔵

建部凌岱 五寿図 個人蔵

建部凌岱 虎図 弘前市立博物館蔵

建部凌岱 威振八荒図 個人蔵

「建部凌岱展 その生涯、酔たるか醒たるか」が板橋区立美術館で開催される。江戸中期に活躍した、建部凌岱(たけべ・りょうたい、1719~1774)の初めての本格的な展覧会。

 凌岱(号に涼袋、吸露庵、綾足、寒葉斎など)は、弘前藩の家老・喜多村家の次男として江戸で生まれた。弘前で文武両道の教育を受けるも、兄嫁との道ならぬ恋の噂により20歳で出奔、出家して説教僧となった。のちに還俗、俳諧で身を立て、主に江戸と京都を拠点として各地を遊歴するが、片歌の提唱者として開眼した途端、俳諧をあっさりと捨ててしまう。

 歌人、随筆家、読本作家、国学者としても活躍し、有り余る才能を縦横無尽に発揮した凌岱は、三熊花顛(みくま・かてん)撰・伴蒿蹊(ばん・こうけい)補の『続近世畸人伝(ぞくきんぜいきじんでん))』においても、「大胆で勇気があり、抜群の才能を持ち、世を弄んで終生を遊びのように考えた、生涯酔っているのか醒めているのか計り知れない人」などと評されている。

 また、俳諧を通して出会った南画家・彭城百川(さかき・ひゃくせん)に影響を受け、俳画をはじめ画事にも秀でた凌岱は、中津藩・奥平家の支援を受け、ほかの江戸の絵師に先駆けて、1750(寛延3)年に長崎へ遊学。唐通事の熊斐(ゆうひ)や唐絵目利の石崎元徳(いしざき・げんとく)らに色鮮やかで写実的な花鳥画を学んだ。1754(宝暦4)に再訪した際には、山水画で知られる来舶清人の費漢源(ひ・かんげん)に師事。これらを通して凌岱は、中国から舶来した最新の様式をも自らのものにし、独自の画風を確立した。

『寒葉斎画譜』『建氏画苑』といった画譜の刊行は、その成果といえるもの。また粗く大胆な筆遣いの作風で知られた凌岱の作品のなかでも、海の魚が乱れ泳ぐ「海錯図」と呼ばれる作品群からは、ユーモアあふれる一面もうかがえる。

 本展は、歌人、随筆家、読本作家、国学者と、多彩に活動した凌岱の画業を中心に紹介する。