EXHIBITIONS

Art Powers Japan presents

CHRIS 個展「Take Me Out to the Ball Game」

2022.01.15 - 02.05

CHRIS ROOKIE #025(STACY SPICER) 2021

 RICOH ART GALLERYでは、アーティスト・CHRISの個展「Take Me Out to the Ball Game」を開催する。本展は、伝統文化と現代芸術文化が出会う場所づくりに取り組んでいる一般社団法人アートパワーズジャパン(APJ)が監修・協力。

  CHRISは2021年よりアーティスト活動を開始。独自の視点で収集した膨大なアーカイヴをもとに、デコラージュという技法で作品を制作している。とくに自身のバックグラウンドである1990年代のカルチャーをベースにした数多くの作品を発表。近年の展覧会に、「神宮の社芸術祝祭」(明治神宮の社、2020)、「ROOKIE」(un petit GARAGE、2021)、アートフェア東京(2016~)などがある。

 CHRISは、少年時代から慣れ親しんだ東京のストリートカルチャーに大きな影響を受けている。モチーフとするのは、時代を映し出すストリートの空気感を大切にしながら、都市に生きる人々。一人ひとりの服や顔に古い雑誌や新聞を貼り付け、一部破って削り取るデコラージュの技法が独特のテクスチャーを生み出し、これがCHRISの作品を特徴づけている。

 都市の喧騒のなかで雑誌の広告や新聞記事を身にまとうことは、迷彩服のようにモチーフの存在を街のなかに溶け込ませることを可能にしている。しかし、デコラージュによって剥がされ、削られたあとに残された文字や図像に目を向けるとき、「そんなことがあったのか?こんなものがあったのか?と、今まで見えなった事柄、隠されてきた事実に気がつくのです(CHRIS)」。

 異なった時間、空間、図像、文脈が作品上で出会うシュルレアリスムの表現(デペイズマン)として生まれ、キュビスムやダダイスムで多用されてきたコラージュ。コラージュの対となる手法として知られるデコラージュは、もとの図像を切削することで、社会批判の意味を精鋭化させるものとして誕生した。CHRISは自身が経験したストリートカルチャーの文脈を独自に発展させ、都市が人々に与える無名性・普遍性、あるいは先入観をデコラージュによって解体し、新しい視点・空間性・時間軸を見る者に提示している。

 本展では、新作15点(カラーバリエーションを含め19点)をリコーの2.5次元印刷技術「StareReap」によって制作。これによってCHRISのデコラージュ独特のテクスチャーが新たな表現となって再生され、くっきりと立ち上がった線は野球場にいる女性それぞれの存在を鮮明に印象づける。

 作品に登場する「彼女たち」が何者なのか、それは展覧会場で明かされていく。しかし作家のメッセージはじつにシンプルだ。「新型コロナ感染拡大のなか、多くの人が思うように外に出られませんでした。わたしも怪我をしてしまい不自由を余儀なくされる時期が重なりました。大好きな野球もできない、思うように動けない。そのような私的な感情と、多くの人を解放したいという思いがこの展覧会を後押ししています(CHRIS)」。