EXHIBITIONS

フィリップ・デュラン、ジュスティーヌ・エマール、村上華子、マリルー・ポンサン グループ展

EXPANDED IMAGES 拡張するイメージ

2022.01.15 - 02.10

キービジュアル

フィリップ・デュラン Chauvet Cave(Hand Dots) 2021 Courtesy of the artist – Galerie Laurent Godin

ジュスティーヌ・エマール The First Dream / Hatsuyume(Le Rêve Premier) 2021 ©︎ Justine Emard / Adagp, Paris 2021

村上華子 ANTICAMERA(OF THE EYE) 2.5D #3 2021 Courtesy of the artist

マリルー・ポンサン What girls are made of 2021 Courtesy of the artist – Galerie Laurent Godin

  RICOH ART GALLERY LOUNGEで、イメージの新たなパラダイムについて考察するグループ展「EXPANDED IMAGES 拡張するイメージ」が開催される。参加アーティストは、フィリップ・デュラン、ジュスティーヌ・エマール、村上華子、マリルー・ポンサンの4名。本展では、フランスを拠点に活動する日仏4名のアーティストが、リコーの2.5次元印刷技術「StareReap(ステアリープ)」と共創した新作11点を初公開する。

 フィリップ・デュランは、自分の足で歩き回ることで、なんでもない日常のなかに、社会と世界が変化する際に現れる束の間のサインを嗅ぎ出すアーティスト。ドキュメンタリーの手法を採用したデュランの写真媒体へのアプローチは、華々しさやイベント性とは断固として距離を置き、世界を迂遠的で詩的な方法で表そうとしている。本展で発表する最新シリーズ「ショーヴェ/内的探求」では、フランス南部にある洞窟に残された、人類の歴史上最古の芸術活動の貴重な痕跡をとらえている。

 ジュスティーヌ・エマールは、人間とテクノロジーの間に構築される新しい関係性について探求してきた。写真、ヴィデオ、仮想現実、パフォーマンスといった多様なイメージの表現媒体を組み合わせながら、ロボット工学、神経科学、有機生命体、人工知能の領域を行き来するように創作活動を行っている。エマールの思考は、人間と機械のあいだの相互作用について源流をたどることにも向かい始めた。数年前から睡眠中に現れる無意識のイメージに3D印刷による彫刻としての形態を与えることに取り組み、今回展示される三連画《The First Dream/初夢》は、自身の脳から発された、夢における映像を電子信号として物質化した作品だ。

 村上華子は、東京藝術大学で修士課程を修了したのちフランスに拠点を移し、表現媒体の技術の歴史、とりわけ写真の古典技法や活版印刷術を探求しながら制作している。それらが発明された時代に関する調査を通じて、例えば、リュミエール兄弟によってガラス板に色の付いたジャガイモの澱粉を用いて現像された、最初のカラー写真技術であるオートクロームによる連作「ANTICAMERA(OF THE EYE)」では、村上は写真とは何かという真に認識論的な問いかけを提示している。

 マリルー・ポンサンは、メディアにおける女性の身体の表され方を通じて、女性性の幻想について考察する作品を制作。ポンサンが探求するその夢幻的な世界には、様々な趣向と欲望、欠乏、先入観が交錯する現代社会と、そこに生きるわたしたちの個人的、集団的な関係が見て取れる。またイメージを拡大し堆積をすることで、被写体と鑑賞者の距離を縮め、表された身体を触知的に体験させる。新しい連作「What Girls Are Made Of」もまた、政治的・フェミニズム的な性格が色濃く刻まれた作品だが、なによりも女性たちに向けて、社会の支配的な美のコードやモラルの束縛から解放され、自身の女性性をコンプレックスなく生きることを呼びかけている。

 今日、イメージを想像しつくり出すには多様な方法があることを示してくれる4名のアーティストたち。そして「EXPANDED IMAGES」展で採用されたリコーとの新しい制作プロセスによって、遠隔地でのコラボレーションが可能になった。4名と革新的な印刷技術との共創は、「拡張するイメージ」として新たな写真のエクリチュールの考察に寄与すると同時に、デジタルイメージの氾濫する現代の文脈における物質性と非物質性の可能性も思索する。

 なお本展は美術批評家・キュレーターであり、フランス国立造形センター(CNAP)の写真コレクション責任者、パスカル・ボースが芸術アドバイザーを担当。展覧会は、株式会社モ・ティフによって、ローラン・ゴダンギャラリーとタカ・イシイギャラリーの協力のもと、企画制作された。