EXHIBITIONS

神奈川県民ホール2021年度企画展

ミヤケマイ×華雪 ことばのかたち かたちのことば

ミヤケマイ 天の配剤 2020 Mai Miyake,Sometimes the Apple Falls, 2020 Photo by JUN YAMAMAOTO
初出:さいたま国際芸術祭2020

ミヤケマイ 天の配剤 2020 Photo by Satoshi Shigeta

華雪 木 2017 ヴァンジ彫刻庭園美術館蔵 Photo by Kenji Takahashi

華雪 花 2016 Photo by KABO

ミヤケマイ Photo by Satoshi Shigeta

華雪 Photo by KABO

 神奈川県民ホールギャラリーは、美術家・ミヤケマイと書家・華雪による展覧会「ミヤケマイ×華雪 ことばのかたち かたちのことば」を開催する。

「本当に大切なことは何か」コロナ禍によって私たちの価値観が大きく転換していくなか、立ち止まって考える人たちにむけて、「『ことばを贈る』展覧会をつくりたい」という思いから企画された本展は、「ことば」の力と、言葉以前の「かたち」を探りながら、冒頭の問いに2人のアーティストが応答する試みとなる。

 ミヤケマイは、日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自の視点を加え、 過去・現在・未来をシームレスにつなぎながら、 物事の本質や表現の普遍性を問う作品を制作してきた。媒体を問わない表現方法を用いて骨董・工芸・現代美術・デザイン、文芸など、既存の狭苦しい区分を飛び越え、日本美術の文脈を独自の解釈と視点で伝統と革新のあいだを天衣無縫に往還する。

 華雪(Kasetsu)は1975年京都府生まれ。幼い頃に漢文学者・白川静の漢字字典にふれたことで漢字のなりたちや意味に興味を持ち、文字の成り立ちを綿密にリサーチし、現代の事象との交錯を漢字一文字として表現する作品づくりに取り組むほか、文字を使った表現の可能性を探ることを主題に、国内外でワークショップを開催している。また、『コレクション 戦争×文学』(集英社)をはじめ書籍の題字なども多く手がけている。

「ことば」は、語り、伝え、考えるための道具。しかし人間は、言葉にならない感情を抱えて生きており、アートは、様々な方法でかたちにできない言葉を表すことができる。

 本展では、ミヤケは、舟をモチーフとする大規模な新作インスタレーションにより、水辺の風景から立ち上がる人間の営みからコミュニケーションについて問いかける。いっぽう華雪は、人の根源にある自然界への畏怖を「木」という文字から再考し、また、人が精神の奥底から「ことば」を取り出すあり様を、書く行為そのものを見せることで表現する。

 東洋思想の陰陽のように、あるいはコインの表裏のように、対照し、響きあう、2人の作家の「ことばのかたち かたちのことば」。近いフィールドで活動しながらも、これまでクロスする機会がなかった2人が出会い、光と影の関係性が止まることなく流動する、ひとつの世界が生み出される。