EXHIBITIONS

淺野健一個展「phantázō」

Dub Gallery Akihabara
2021.11.18 - 12.10

展示風景より

展示風景より

展示風景より

展示風景より

展示風景より

 淺野健一の5年ぶりとなる個展「phantázō」がDub Gallery Akihabaraで開催されている。12月10日まで。

 国宝級の仏像などを修復してきた伝統的技術をベースに、「憑依」「一体化」をテーマにしながら、木彫にポップカルチャー的な要素を融合させ、現代美術ヘと昇華させてき淺野健一。近年では最先端のデジタルスカルプティングを駆使し、自らクリエーションした3Dデータをベースに、木彫技術と融合した新たな彫刻のあり方を追求している。

 本展では、「glitch(コンピュータのバグ)」を可視化した、これまで体験したことのないリアルとバーチャルの境界線を彷徨う空間を創造する。また会場では、淺野の新作と旧作が登場するゲームも体験できる。

 淺野の活動15周年記念ともなる本展。作家は次のステイトメントを出している。

「シミュレーション仮説というものがある。この世界は高度に発達した文明によって作られたシミュレーションでバーチャルな世界なのではないか、という仮説。私も常々、今のこの肉体は借りてるだけという感覚になる時がある。この仮説に基づくなら、人間が想像してきたものは全てただの情報に過ぎないことになり、宗教が語ってきた天国や地獄や、神話が語ってきた神が住む世界、鬼が住む世界、そしてネット世界、バーチャル空間も全て同一線上に語れることになる。ならば民話や神話に語られる夢と現を行き交うような話は、シミュレートのバグによって生じたものではないのか。

人の進化の一つの形として、機械やコンピュータとの融合がSFや都市伝説で語られ始めている。現実世界でサイボーグとして、あるいはサイバー空間でデータとして永遠に生きるのか、そんな世界でもやはり何かを拝んで救いを求めたくなる時もあるのだろうか。そして形が変わっても永遠に生き続けることは、人にとって幸せなのか不幸なのか、天国なのか地獄なのかの2極性を表現する。

本個展では科学やテクノロジーとは対極に位置する宗教の、シンボルである偶像に3Dモデリングによるバグを起こした形を創造した。これは光背が如来の頭にめり込み、形の表面(ポリゴン)が壊れて体積がない状態。エッシャーの絵のように本来はpcの画面上でしか存在できない形である。PC上でしか存在できない形をリアルに目の当たりにすることによって夢と現の境界線を曖昧にしひいては、今この現実を生きているか?というメッセージを問いかける。個展タイトルの『phantázō』は古典ギリシャ語で『可視化する』の意。本展ではglitch(コンピュータのバグ)を可視化した(淺野健一)」。