EXHIBITIONS

開館30周年記念

物語る 遠藤彰子展

2021.10.02 - 12.12

遠藤彰子 みつめる空 1989 相模原市蔵

 平塚市美術館は、「開館30周年記念 物語る 遠藤彰子展」を開催している。遠藤彰子は長年にわたり精力的に活動し、全国の美術館で大掛かりな個展を行うなど、現在もっとも注目される洋画家のひとり。その超大作を中心に、各時代の数々の代表作品を紹介する。

 1947年、東京都に生まれた作家は幼少より絵に親しみ、武蔵野美術短期大学に学んだ。72年、女流画家協会展に出品した《楽園》がマツダ賞を受賞し、画家としてデビュー。この頃から素朴で童画的な要素を取り入れた「楽園」シリーズが始まった。同シリーズは結婚を機に都内から自然あふれる相模原市に移ったことから誕生した。

 その後、70年代後半から「街」シリーズの制作を開始。この「街」シリーズによって洋画家としての名が広く世間に知られるようになった。78年に昭和会展で林武賞、80年に女流画家協会展の女流画家協会賞など受賞を重ね、86年には「街」シリーズの探究を凝縮した《遠い日》で安井賞を受賞。画家としての評価を決定的なものとした。

 89年からは500号をひとつの単位とする大作のシリーズを制作。単眼の視点から多視点の構図へと向かい、螺旋構成など空間構成に様々な試行を続けている。また、神話的世界や物語性を内包した作品は、その絵画世界の壮大さによって見る者を圧倒する。2000年代に入ると、500号を結合し、1000号、1500号とさらなる大型作品を発表。その圧巻のスケールは作品内容の充実とともに高く評価されている。例をみないスケール感は「みる」というよりも体感する絵画と言える。

 本展では、今回のために描かれた新作も展示。圧倒的な存在感と深い物語性を秘めた独自の遠藤ワールドをこの機会に楽しんでほしい。