EXHIBITIONS

curator’s vol.2

新平誠洙「Inversion2 反転/倒錯」

2021.11.11 - 12.04

新平誠洙「Inversion2 反転/倒錯」より Photo by yoso

 新平誠洙(にいひら・せいしゅ)の個展「Inversion2 反転/倒錯」がGALLERY TAGA 2で開催されている。12月4日まで。

 新平は1988年⼤阪府⽣まれ、2012年京都市⽴芸術⼤学美術学部美術科油絵専攻卒業、14年同⼤学⼤学院美術研究科絵画専攻修了。⾃⾝の内的イメージを出発点に発⽣する複数の時間軸や空間の歪み、分裂を「ノイズ」ととらえ、このノイズをキーワードとして、複数のモチーフを重ねて描く⽅法で絵画を制作している。

 新平の作品の画⾯上では各モチーフが視覚的なノイズまたはシグナルになり、視点や視覚効果、また映像などで実践される動きなどによって、⼊れ替わっていく構造を持つ。イメージとイメージが互いに侵⾷しあい、壊しあいながら、融合してリアリテイを創出していく。リアリティは混乱であり、新平は、インターネットによる情報過多の時代、虚実の区別もままならない「間(あわい)の世界」を漂流している感覚を抱き、そこに創作の着想を得ていると話す。

 本展は、学芸に携わり、⽇々新しい表現と向き合うキュレーターとともに展覧会をつくる「curator’s」の第2弾。今回は和泉市久保惣記念美術館に勤務し、近年では「ピカソと⽇本美術」展(2017)を担当した町⽥つかさがキュレーションを手がける。

 本展で新平は、「反転/倒錯」を意味する「Inversion」シリーズの新作を展⽰。同名シリーズは、連続して描かれるモチーフと画⾯上のもうひとつの要素が重なることで、すでに複数の視点が提供されているが、本展ではさらに新しい試みによって、モチーフ・媒体・時空間それぞれにノイズとシグナルの反転を発⽣させる。

 新作のモチーフとなるのは、1936年に開かれたベルリンオリンピックの記録映像(『Olympia 1.Teil-Fest der Völker』Leni Reifenstahl、1938)からの引⽤。ノイズとシグナルの反転により、⾒えてくるもの、あるいは⾒ようとするものにピントを合わせるのか、その⼊れ替わりを会場で体験してほしい。機械設計・製作は乃村拓郎。