EXHIBITIONS

西村盛雄「忘却ー6つの種子」

2021.10.30 - 12.25

西村盛雄 忘却ー6つの種子 no.1 2021

 タグチファインアートでは、西村盛雄(にしむら・もりお)の個展「忘却ー6つの種子」を開催する。10月30日~12月25日まで。

 西村は1960年東京都生まれ。85年に多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了。国内で何度か作品を発表後、91年にドイツ政府給費留学生(DAAD)として渡独。95年にデュッセルドルフ美術アカデミーでG.ユッカーによりマイスター・シューラーを取得した。98〜99年まで、文化庁派遣芸術家在外研修員としてヨハネス・グーテンベルグ・マインツ大学造形芸術学部文化精神学科に在籍し、宗教と現代美術について研究。その後2年半にわたり同学科で講師を勤めた。2001年には「2001/2002年度クンスト・スタ チオン・聖ペーター教会の芸術家」というタイトルを受け、以来ドイツを拠点に制作活動を続けている。

 西村が一貫して試みているのは、蓮の葉や実などの宗教的な象徴をモチーフとした作品を制作することを通して、人間と自然、世界との関係を探っていくこと。「生きている葉を写し取る、あるいは再製するという意識はない。蓮の葉をモチーフに制作しているのは、私に輪廻や宇宙などの形而上学的な存在をイメージさせるものがあり、それを直接的にかたちにしている。つまり蓮の葉に似た私の観念の透明な凝固物なのです」と、作家は語る。

 本展は、蓮の種子をモチーフにしたブロンズ彫刻の新連作「忘却ー6つの種子」と、実際の蓮の葉を和紙に漉き込んだ平面作品《億劫(おくこう)》を展示する。

「忘却」は、積層したベニヤ板の角を落として滑らかな曲線を得る、という独自の方法によって制作された原型から鋳造されたもの。「忘却」は大徳寺禅の悟りの境地を表わした小堀遠州の茶室「忘筌」と、ギリシャ神話『オデュセイア』にある蓮の実を食べた時の「天国を感じる忘我の境地」とが、作家のなかで相互にあいまみえ制作の動機となっている。