EXHIBITIONS

ジョナサン・ハマー 個展「OPERATION OCTOPUS」 丸川コレクション展「巻物と触手」

SOKYO ATSUMI
2021.10.20 - 11.27

ジョナサン・ハマー SEEN FROM ABOVE 2020 パネルにミクストメディア H63×W63×D5cm

ジョナサン・ハマー OPERATION OCTOPUS 2020 パネルにミクストメディア H117×W143×D6cm

ジョナサン・ハマー What's in the box #3 2020 ワイン樽の木片に陶器 H35.5×W28×D21cm

ジョナサン・ハマー CURLY 2017 皮、金、アンティークの銀の額縁 H52×W42×D1cm

ジョナサン・ハマー ONE ANOTHER 2017 皮、金、アンティークの額縁 H75×W42×D2cm

ジョナサン・ハマー ORTHODOX OCTOPUS 2014 パネルにミクストメディア H58×W69.5×D1.5cm

  SOKYO ATSUMIは、ジョナサン・ハマーの東京初個展「OPERATION OCTOPUS」および、丸川コレクション展「巻物と触⼿」を開催する。

 本展では、ハマーの代表作である、多彩でエキゾチックな動物の⽪と⾦箔押しを特徴とするマケトリー(⽊象嵌)作品、四国産の⼿漉き和紙に描写したドローイング作品、陶作品を展示。そして、ユダヤ⼈と⽇本⼈という異⽂化間に成り⽴つ友情や共感から始まったというハマー作品の「丸川コレクション」より、貴重な過去作を紹介し、作家のこれまでの活動が最新作とどのようなつながりを持っているのかを検証する。

  1960年、シカゴに⽣まれたハマーは、現在はスペインに在住。30年にわたりドローイングや写真、書籍、彫刻、陶、版画などに加え、代名詞でもある珍しい動物たちの⽪をつなぎ合わせた装飾パネルを制作し、これまで45回以上の個展を世界各地で行ってきた。

 ハマーは、世界的な移⺠問題や⾃⾝の家系がたどってきた歴史に触発され、《Kovno / Kobe (コブノ/神⼾)》を継続的に展開している。これは、リトアニアのコブノ(現・カウナス)のユダヤ⼈が⽇本⼈外交官・杉原千畝の「命のビザ」発給によって⼤挙して国外へと逃れ、ロシアを経てやがて神⼾で逗留するという第⼆次世界⼤戦中に起こった出来事を⾒つめるプロジェクトだ。

 杉原の助けで⽇本通過ビザを取得したユダヤ⼈避難⺠たちは、神戸や横浜市を経由し、ユダヤ⽂化とは⼤きく異なる日本文化にふれた。対して、難⺠の受け⼊れ側は難⺠をどう⾒ていたのか、ハマーは「急激かつ突発的に異⽂化に接するとき、他者というものはどう⾒えてくるのだろうか」と⾃⾝に問い、《Kovno / Kobe (コブノ/神⼾)》のプロジェクトにおいて記号論(記号、シンボル、⽤途、解釈を中⼼とする思想体系)を援⽤することで、解き明かそうとしている。

 本展の表題作《Operation Octopus》は、アール・デコの影響が色濃いヨーロッパ的なデザインで、サケやリザードシャーク、カエル、ビーバーの尻尾、アザラシ、ヘビ、エイなどの皮を配した木象嵌作品。戒律を破った僧侶が、死にゆく⺟が⾷べたいと望んだタコを⽣きたままたずさえ歩いていたところ、箱のなかでタコが経典に姿を変えたという、京都の蛸薬師(たこやくし)堂に伝わる逸話から着想を得ている。

 ハマーがこの作品で示唆するものは、動物が経典へと変貌を遂げるなかで生まれる奇跡的な瞬間であり、異文化間での解釈の相違を下敷きとした鏡像だ。作中では帽子のなかにあるタコは敬虔な巻き髪のユダヤ人に、カニの甲羅に見立てた巻物の上端にあるトーラ冠はカニへと、それぞれの形態の変容が見て取れる。

《Operation Octopus》に加えて、3点の小さなレザーパネル作品も展示し、大型作品と同様にユダヤ人になぞらえたタコが経典に変化を遂げる瞬間を見つめる。そのほか、同じく京都の伝承を取り上げたドローイング7点、タコが本を象った木製ブロックに姿を変える陶作品3点も紹介する。