EXHIBITIONS

𫝆井政之展―自ずから然らしむ

2021.10.15 - 11.28

𫝆井政之 円游大皿 2011 個人蔵

𫝆井政之 平和への談判大皿 2018 個人蔵

𫝆井政之 苔泥彩鼎壺 1966 個人蔵

𫝆井政之 苔泥彩印華飾壺 1976 たけはら美術館蔵

𫝆井政之 鈞窯茶盌 銘「あけぼの」 1971 個人蔵

𫝆井政之 大皿制作風景

竹原豊山窯の工房風景

 2018年文化勲章受章者である𫝆井政之は、竹原市に窯を構え、広島にゆかりのある陶芸家。1983年には東広島市立美術館旧館(八本松町)で公立美術館初となる個展を開催。本展「𫝆井政之展―自ずから然らしむ」は、38年ぶりの個展となる。

 𫝆井は大阪市出身。1943年、父の故郷竹原市に疎開する。47年に広島県立竹原工業学校金属工業科を卒業後、父のすすめで陶芸家を志した𫝆井は、備前の鈴木黄哉(おうさい)、西川清翠(せいすい)のもとで修業を始めた。49年より岡山県工業試験場窯業分室に勤務し、釉薬や陶土を研究。52年に京都で初代勝尾青龍洞の門人となる。同年、京都青陶会の創立同人となり主宰の楠部彌弌(くすべ・やいち)に師事、翌年第9回日展で初入選を果たした。以後、日展を中心に発表・受賞を重ね評価を高め、60年代にはオリジナル釉薬である「苔泥彩(たいでいさい)」や代表技法の「面象嵌(めんぞうがん)」を成功させる。そして78年に竹原に登窯「竹原豊山窯」を築き、現在に至る。

 竹原の窯と在住地の京都と往復しながら、強度のある東広島市西条の陶土を好みしばしば制作に用いる𫝆井。土という素材の魅力を最大限に引き出しながら、身近にある自然や素材を作品に取り入れた新たな表現へと果敢に挑んでいる。

 本展では、これまでほとんど公開されてこなかった初期作品をはじめ、オリジナル技法である苔泥彩や面象嵌、近年新たに挑戦している白砂瓷(はくさじ)まで、作家の作陶人生を作品や資料を交えて紹介。また使用している素材や生命感豊かなモチーフなど身近な自然や暮らしとの関わりに焦点を当てながら、𫝆井が長年培ってきた独自の美意識に迫る。