EXHIBITIONS

生誕110年 香月泰男展

香月泰男 青の太陽 1969 山口県立美術館蔵 ※シベリア・シリーズ

香月泰男 水鏡 1942 東京国立近代美術館蔵

香月泰男 雨〈牛〉 1947 山口県立美術館蔵 ※シベリア・シリーズ

香月泰男 電車の中の手 1953 香月泰男美術館蔵

香月泰男 復員〈タラップ〉 1967 山口県立美術館蔵 ※シベリア・シリーズ

香月泰男 公園雪 1971 島川美術館蔵

「生誕110年 香月泰男展」が神奈川県立近代美術館 葉山で開催。画家・香月泰男が戦争体験をもとに描いた「シベリア・シリーズ」全57点が一堂に会する。

 太平洋戦争とシベリア抑留の体験を描いたシベリア・シリーズで、戦後洋画史に確固たる地位を築いた香月泰男(1911〜74)。1931年、東京美術学校に入学した香月は、フィンセント・ファン・ゴッホや梅原龍三郎などの先達にならいながら自身のスタイルを模索した。47年に従軍とシベリア抑留を経て復員。以降は、折にふれて大陸での自らの体験を主題に制作するいっぽうで、台所の食材や庭の草花など身の回りのモチーフも色彩豊かに描いた。

 香月は、50年代前半には色彩と形態、材料における試行錯誤を繰り返し、50年代後半に後期の作品を特徴づける黒色と黄土色の重厚な画風に到達。その画風で太平洋戦争とシベリア抑留の体験を主題とする作品を描き、「シベリアの画家」としての評価を確立した。

 香月の画業の全容をたどる本展では、東京美術学校(現・東京藝術大学)時代から最晩年まで、「シベリア・シリーズ」全57点を含む各年代の代表作を制作年順に紹介。一大叙事詩として読み取られることの多い「シベリア・シリーズ」を解体し、同時期に制作された他作品と展覧することで、画家の創作活動における同シリーズの位置づけを再検証するとともに、香月の芸術の本質に迫る。

 なお本展と同時期に、戦争体験に基づいた作品や、香月と交流のあった作家を紹介するコレクション展「内なる風景」が開催される。