EXHIBITIONS

高山明「戦争画 / ヘテロトピア - 東京国立近代美術館編」

2021.09.11 - 10.30

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 MISA SHIN GALLERYは、高山明の個展「戦争画 / ヘテロトピア - 東京国立近代美術館編」を開催する。

 高山によるヘテロトピアシリーズの第1回「東京ヘテロトピア」は、参加者がガイドブックとラジオを手に東京を巡るツアーパフォーマンスとして2013年に初演された。このプロジェクトでは、指定された場所でラジオの周波数を合わせると、留学生や移民、難民として東京に住むことになったアジアの人々について、詩人や小説家たちが書き下ろした物語の朗読が流れ、東京におけるアジアの歴史が浮かび上がってくる。その後「ヘテロトピア」シリーズは、北投ヘテロトピア(台湾、2016)、ベイルート・ヘテロトピア(レバノン、2017)、ピレウス・ヘテロトピア(ギリシャ、2017)、アブダビ・ヘテロトピア(アラブ首長国連邦、2019)、リガ・ヘテロトピア(ラトビア、2019)など世界各地で展開され、東京版はアプリとなって現在も継続されている。

 初公開となる「戦争画 / ヘテロトピア - 東京国立近代美術館編」は、東京国立近代美術館にある戦争画を、別の場所で「展示」するプロジェクト。今回扱う戦争画の多くは1937〜45年のあいだに日本軍からの委嘱によって制作されたもので、終戦後、GHQによって収集されアメリカに接収されたが、70年には「無期限貸与」というかたちで日本に返還され、現在153点が東京国立近代美術館に収蔵されている。

 本展では、ギャラリーの白い壁にQRコードが並び、その空間に絵画は存在しない。来廊者は自身の携帯電話でQRコードを読み取りアクセスすると、戦争画をもとに創作された詩の朗読を聞くことができる。それらの詩は絵画の舞台となった国の詩人によって書かれ、本人によって朗読されたものだ。朗読を聴きながら、東京国立近代美術館の収蔵庫にある絵画を思い描くことで、物理的には目の前にない戦争画がギャラリーで「展示」される。

 展示作品のひとつ、ワリス・ノカンの詩「グラン フォン ブラン(素晴らしい白色)」は藤田嗣治の《薫空挺隊敵陣に強行着陸奮戦す》から創作された。薫空挺隊の多くは台湾の原住民族出身者で構成され、この戦争画にはフィリピン・レイテ島にあるアメリカ軍占領下の飛行場に強行着陸し襲撃する凄惨な様子が描かれている。ワリスは台湾原住民族のひとつ・タイヤル族の出身であり、原住民作家として台湾では広く知られている。詩のなかでは、戦争画に描かれている台湾人日本兵の1人としてそれを描いた藤田に語りかける、ワリス本人の原文の中国語での朗読と、アーティスト・小沢剛による日本語訳の朗読を聞くことができる。

 この他に、宮本三郎《山下、パーシバル両司令官会見図》、山本新一《仁川俘虜収容所に於ける英豪兵の作業》、猪熊弦一郎《◯◯方面鉄道建設》から創作された詩を展示。本プロジェクトは今回の展覧会のみにとどまらず、今後も継続されていく予定だ。