EXHIBITIONS

細見古香庵生誕120年記念 美の境地

2021.08.24 - 10.17

金銅春日神鹿御正体 南北朝時代 細見美術館蔵 重要文化財

愛染明王像 平安時代後期 細見美術館蔵 重要文化財

豊公吉野花見図屛風(左隻) 桃山時代 細見美術館蔵 重要文化財

豊公吉野花見図屛風(部分) 桃山時代 細見美術館蔵 重要文化財

芦屋霰地楓鹿図真形釜 室町時代 細見美術館蔵 重要文化財

 細見コレクションの礎を築いた初代細見古香庵(本名・細見良、1901~79)。本展「細見古香庵生誕120年記念 美の境地」では、古香庵が既存の価値観にとらわれず、厳しくもユニークな鑑識眼で蒐集した作品を展示している。

 1901(明治34)年、兵庫県美方郡浜坂町栃谷の農家に生まれた細見は、10代で単身大阪に奉公に出た後、毛織物業界に入った。24歳で独立を果たし、30代に事業を拡大。この頃から古美術蒐集を始めた。泉大津に邸宅を建てたのを機に、京都・嵯峨 天龍寺の関精拙老大師より「古えの香り充つるゆかしき庵」の意が込められた「古香庵」の号を授った。60歳で事業から引退し、以降、古美術三昧の日々を過ごした。

 古香庵が蒐集した美術品は土器にはじまり、仏画、和鏡、密教法具、茶の湯釜、根来、七宝など多岐におよんだ。こうした蒐集品を茶会やもてなしの場で用い、その独自の美意識は、いまの細見美術館の展示スタイルにも大きな影響を与えている。
 
 なかでも、古香庵が「モノのかたちの厳しさと甘さ」を学んだ平安時代の《金銅五鈷鈴》などの金工品や、「世界最高の美術品は日本の藤原時代の仏画である」という信念のもと蒐集した《愛染明王像》や《普賢菩薩像》、敬愛していた豊臣秀吉が描かれた《豊公吉野花見図屛風》、茶の湯釜に開眼するきっかけとなった《芦屋霰地楓鹿図真形釜》は、古香庵の美意識の核心をなしている。

 興味の赴くまま、己の美意識を信じて蒐集を続けた古香庵。本展では執念のコレクターが至った「美の境地」を、愛蔵の品々を厳選して紹介する。