EXHIBITIONS

中里 隆 陶の旅人

中里隆 種子島擂鉢 1971 個人蔵 撮影=尾見重治、大塚敏幸

中里隆 緑釉提瓶 2008頃 個人蔵 撮影=尾見重治、大塚敏幸

中里隆 唐津三島皿 2009頃 個人蔵 撮影=尾見重治、大塚敏幸

中里隆 焼き〆叩き大壺 2017 個人蔵 撮影=水崎浩志

有元利夫 無題 1982 三番町小川美術館蔵 撮影=尾見重治、大塚敏幸

 佐賀県の唐津を拠点に、国内外を⾃在に⾏き来しながら独⾃の作陶を続けてきた陶芸家・中⾥隆。その仕事の全貌を紹介する展覧会「中里 隆 陶の旅人」が菊池寛実記念 智美術館で開催されている。

 中里は1937年、唐津の名門陶家である中里太郎右衛門窯の十二代目当主(号:無庵、1895〜1985)の五男として生まれる。京都や唐津で作陶の基礎を修得した後、71年には種子島に渡って島の土による種子島焼に取り組む。帰郷後、自身の「隆太窯」を築窯し拠点としつつ各地を旅し、その土地での出会いと学びを楽しみながら作品を手がけてきた。

 中里のルーツとなっている「唐津焼」は、桃⼭時代に朝鮮半島から伝わった技を起源として、「異国(唐)への港(津)」という地名を持つ九州の唐津で誕生した。中里は⼤胆で溌剌としたエネルギーを放つ古唐津の美には共感を抱きながらも、それを伝統や規範として写す仕事には反発し、旅を重ねるなかで、海外の土や釉などの現地の素材も活かしながら制作を行うスタイルを確⽴。空間を飾り、手でふれ、用いることに喜びを見出してきた日本のやきものの原点である「器」に基礎を置くその作品は、長年にわたって多くの人を魅了している。

 本展では、国内外で制作された鉢や壺などの大型作品から、食卓を彩る食器までを展示。新旧合わせ100余点によって中⾥の幅広い仕事を紹介している(会期中、展示替えあり)。