EXHIBITIONS

中谷ミチコ「引き出しの中のドローイング」

中谷ミチコ 手を伸ばす 2021 越後妻有里山現代美術館 MonETのためのドローイング

 アートフロントギャラリーでは、中谷ミチコの個展「引き出しの中のドローイング」を開催する。

 中谷は1981年東京都生まれ。ドイツのドレスデン造形芸術大学を修了後、現在は三重県にアトリエを構え制作活動を行っている。2010年にVOCA展(上野の森美術館)奨励賞受賞。18年に「DOMANI・明日」展(国立新美術館)へ出品し、大地の芸術祭アートトリエンナーレ2018(新潟)に参加。そして19年の三重県立美術館での個展開催など、近年ますます活躍の場を増やし、今後も国際展や美術館での発表を予定している。

 また、20年には東京メトロ銀座線虎ノ門駅に幅9メートルのパブリック彫刻《白い虎が見ている》を設置し、中谷独自の技法による立体表現と、その迫力が大きな話題となった。今年1月には、これまでの活動と将来性から選考され新鋭作家に贈られるタカシマヤ美術賞にも選ばれるなど、いま注目されるアーティストのひとりだ。

 中谷の代表的な彫刻作品は、一般的なレリーフとは異なり凹凸が反転している立体作品。凹んだ造形、その空虚の中にモチーフが存在し、「不在性」と「実在性」を問い続けるその作品は、鑑賞者と物体の間に複雑な距離感をもたらし、「そこにあるのに、ない」不思議な存在感を放つ。この輪郭が曖昧でやわらかな印象を与える彫刻作品は、「絵のような彫刻をつくれないか」という中谷の試みから始まっており、イメージの源泉であるドローイングは中谷の創作のなかで必要不可欠な表現となっている。

 本展ではそのドローイング作品を中心に展開。今夏にリニューアルオープンした越後妻有里山現代美術館 MonETのコレクション作品のためのドローイングや、コロナ禍で日常的に描き続けてきたドローイングも展示され、彫刻家・中谷ミチコの創造の源泉を覗き込む展覧会となる。