EXHIBITIONS

原口典之 個展「コウセイ」

2021.07.10 - 09.04

原口典之 “コウセイ”5 2000

 美術家・原口典之の個展「コウセイ」がYOD Galleryで開催されている。会期は9月4日まで。

 もの派の代表作家として語られることの多い原口。鉄材や鋼材、ゴムやポリウレタンなどの工業素材をあるがままに見せるだけでなく、その物性を活かしながら、場の生成に能動的に介入する作品を残した。

 本展では、1998〜2010年にかけて制作されたドローイングに焦点を当てる。本展タイトルの「コウセイ」とは、展示作品の一部である「コウセイ」シリーズに由来。自身のドローイングについて、原口は次のように語った。

「零点何ミリかの極めて薄い紙を使ったりとか、鉛筆画紙を刻んだりとか、紙を擦っていくときの非常にデリケートな圧力というか、そういった身体の感覚というか直接性を大切にしている(*)」。

 造形作家である原口は、物体に直接触れ、その重さや物性を感じ取りながら巨大な作品を制作した。この言葉から、作家にとってドローイング制作への姿勢は、立体作品をつくる際の方法論とさほど変わりはないと推察できる。まるで立体作品を「構成」していくかのように、紙のうえに展開された平面作品は、原口の思考を読み解く手がかりとなるだろう。

*──『ACRYLART vol. 27』(ホルベイン工業株式会社、1996、p.10)