GENKYO 横尾忠則

　日本を代表する現代美術家のひとり、横尾忠則の大規模個展「GENKYO 横尾忠則　原郷から幻境へ、そして現況は？」が東京都現代美術館で開催される。

　横尾は1936年兵庫県西脇市生まれ。高校卒業後、神戸でデザイナーとしての活動を始め、60年に上京。グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして脚光を浴び、その後、80年にニューヨーク近代美術館で大規模なピカソ展を見たことを契機に、画家としての本格的な活動を開始する。

　これまで横尾は、様々な手法と様式を駆使して森羅万象に及ぶ多様なテーマを描いた絵画作品を生み出し、国際的にも高く評価されている。2000年代以降、国内の国公立美術館での個展のほか、パリのカルティエ現代美術財団（2006）をはじめ海外での発表も多数。12年に横尾忠則現代美術館（兵庫県神戸市）、続いて翌年に豊島横尾館（香川県豊島）が開館した。

　本展は横尾自らが監修・構成する過去最大規模の個展。絵画を中心に初期のグラフィック・ワークを加えた豊富な作品によって、横尾の芸術の全貌を明らかにする。

　とくに見どころとなるのは、外出が制限されるなか、日々アトリエにこもり没頭して制作した2020〜21年の新作群。コロナ禍でのネガティブイメージをポジティブイメージに変換する試みとして、自分の作品や写真を素材にマスクをコラージュした「WITH CORONA」シリーズを一挙公開する。

　また会場では、横尾が滝の絵を描くために収集した、大量の絵はがきのコレクションからなるインスタレーションを展開。天井・壁面を覆い尽くすダイナミックな空間が現れる。

　めまぐるしくスタイルの変遷を重ねながら、人間の魂のふるさと「原郷」から汲み上げた、豊かで奔放なイメージの世界「幻境」を描き出してきた横尾。本展は、そうした横尾の「現況」にもふれる好機となる。