八木良太「浦島太郎の宇宙旅行」

　八木良太が無人島プロダクションでは約3年ぶりとなる個展「浦島太郎の宇宙旅行」を開催。本展では、世界中が新型コロナウイルスに翻弄されている2020年から現在に至るまでの、「時間」に対する八木の考察から生まれた新作群を展示する。

　八木は1980年愛媛県生まれ。京都造形芸術大学芸術学部空間演出デザイン学科卒業。デビュー当時から「時間」をテーマに作品を継続して制作してきた。

　本展の出展作は、コロナ禍のなか、時間知覚や時間評価の多様性だけではなく、「時間はパラレルに多数存在するのでは」という発想から、「浦島太郎」を複数ある時間の概念のシンボルとして取り上げ、様々な角度から考察している。

　作家自身はこの1年を、いままで時間と競うかのようにスピードをもって物事を決断しなければいけなかった状態から、じっくり時間をかけて考えることが可能となったことで、時間の流れの変化をポジティブにとらえることができたと言う。

　本展では、時間を体感できるものとしてとらえた、サウンド・インスタレーション《Time Signal》をはじめ、時計をモチーフとして視覚で時間を切り取る写真作品《Framed Time》、同じく時計をモチーフとしていながらも、個々が違う時間をパラレル的に持っていることを視覚化した《Everyone has different time》を展示。また過去を現在に呼び戻すような、「浦島太郎」を再現したプログラミング作品《TODAY-10》、時の蓄積を視覚化した《Elephant》など、各作品で異なった「時」へのアプローチを試みる。

　ギャラリーというひとつの空間に、バリエーションに富んだ八木の時間への考察を多面的なインスタレーションとして再現する本展。それぞれの「時」を視覚で、聴覚で、実際に体感してほしい。